急性硬膜下血腫の基礎知識
POINT 急性硬膜下血腫とは
脳は髄膜(ずいまく)という膜で包まれています。髄膜は3層構造になっており、脳の表面に近い方から順番に軟膜、くも膜、硬膜と呼びます。急性硬膜下血腫は、頭への強い外力が原因で脳表面の血管がダメージを受け、硬膜とくも膜の間に出血が広がる病気です。しばしば脳挫傷や頭蓋骨骨折などを合併します。症状としては、脳が圧迫されることにより意識がぼんやりする、受け答えがおかしい、などが見られます。診断は主に頭部CT検査で行います。出血量や年齢、もともとの元気さなどに応じて治療を決定しますが、緊急で開頭手術を行い、止血処置と血腫の除去を行うことが一般的です。急性硬膜下血腫が心配な方や治療したい方は脳神経外科や救急科を受診してください。
急性硬膜下血腫について
- 怪我などが原因で、
硬膜 下(硬膜と脳の間のスペース)で出血している病気- 頭の片側にできる。時に両側にできることもある
- 出血が多く脳を強く圧迫する場合には命の危険があり、救命のために緊急の手術が必要となる
- 主な原因
- 交通事故や転落などで頭を強く打つこと
- 高齢では、比較的軽い
打撲 でも起こりうる
血腫 の量によっては、救命ができても意識が戻らない、寝たきりになるなどの後遺症を残す場合がある
急性硬膜下血腫の症状
- 出血量が少なく軽症の場合には、自覚
症状 が無いこともある - 出血量が多い場合
- 強い頭痛
- 呼びかけに反応しない
- 瞳孔が大きくなる
- 手足の
麻痺 症状が出る- これらの症状が、頭を打った直後や、数分〜数時間後に出現する
- 時間とともに症状が変化していくので、症状が悪化してこないか注意して観察する
- 頭のけがの中でも重症な病気であり、治療を行っても後遺症が残ることがしばしばある
急性硬膜下血腫の検査・診断
頭部CT検査 :出血の量や脳がどのくらい圧迫されているかなどを調べる- 交通事故や転落で頭を打ち、意識が悪いときに行う
- 手術の必要性や緊急性を判断する
- 病状がどう変化していくかの予測をある程度立てることができる
急性硬膜下血腫の治療法
- 出血の量が多く
症状 が重い場合は手術が行われる- 症状が軽い場合、手術は行わないこともある
- 最も重症で
脳幹 という脳の中でも生命中枢を司る部分の細胞が死滅してしまっている場合には手術は行われない
- 手術
血腫 除去術- 血腫がある側の頭皮を大きく切り、頭蓋骨の一部を外して、
硬膜 の下の血腫を吸引して除去する - 出血している部位があれば止血を行う
- 血腫がある側の頭皮を大きく切り、頭蓋骨の一部を外して、
- 外減圧術
- 手術後脳が腫れることが予想される場合に、外した頭蓋骨を戻さない状態で頭皮を
縫合 する - 頭蓋骨が一部ないので、脳が腫れても圧力を逃げていき脳の圧迫されにくくなる
- 手術後脳が腫れることが予想される場合に、外した頭蓋骨を戻さない状態で頭皮を
- 緊急
穿孔 術- 急激に意識状態が悪化していく場合に、手術室に行く前に救急外来で行うことが多い
- 頭蓋骨と硬膜に2cm程度の小さな穴をあけ、圧力を逃がすことで救命を試みる
- 圧力を逃がすと少し時間の猶予が生まれるので、その後手術室に行って通常の血腫除去術を行う
急性硬膜下血腫の経過と病院探しのポイント
急性硬膜下血腫が心配な方
急性硬膜下血腫は頭を強く打ったときに生じます。症状は頭痛や嘔吐、意識障害などがありますが、同じように頭部の打撲で発症する外傷性くも膜下出血、脳挫傷、急性硬膜外血腫といった病態と症状から区別がつかず、頭部のCTを撮影しないと診断をつけることができません。
上記のような症状に該当してご心配な方は脳神経外科(脳外科)のある病院がでの受診をお勧めします。手術については、一般的には専門医、もしくはそれに準ずる経験のある医師が行うことが多いでしょう。
急性硬膜下血腫の診断はCTで行います。国内の総合病院であればほとんどのところにCTの設備がありますので、診断のために特別な病院を選択しなければならない、ということはありません。
急性硬膜下血腫でお困りの方
急性硬膜下血腫の根本治療としては、頭蓋骨に穴を空けたり、頭蓋骨の一部を切り外したりして、内部に溜まった血液を洗い流す手術(穿頭、または開頭 血腫除去術)を行います。
溜まった血液の量が少ない場合には手術を行わずに様子を見ます。この場合、自然に血液が吸収されてなくなるのを待つことになります。しかしそうでない場合には緊急で手術を行います。平日の日中であれば良いのですが、土日祝日や夜間は院内に残っているスタッフが少ないため、緊急で手術を行える病院と、そうでない病院があります。ある程度の規模の病院や、脳外科手術の手術件数が多い病院の方が、時間外の緊急手術により迅速に対応できるところが多い傾向にあります。
急性硬膜下血腫が大きなものであった場合、手術までに時間がかかってしまった場合、急性硬膜下血腫以外に脳挫傷など他の損傷も加わっていた場合などは、手足や顔面の機能に残念ながら後遺症が残ってしまうことがあります。この場合、脳の機能回復を目指してリハビリテーションが必要となります。急性期病院から回復期病院(リハビリ病院、療養型病院)に転院して、リハビリに専念することが多いです。
急性期病院にも一般的にリハビリの施設はついていますが、回復期病院の方がリハビリに専念しやすい環境が整っています。一緒にリハビリを行うことになるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったスタッフです。患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を選ぶ上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、1日に受けられるリハビリの総時間、土日はどうかといった点は、回復期の病院を探す上でのポイントとなります。