へんけいせいこかんせつしょう
変形性股関節症
何らかの原因で股関節の軟骨が擦り減ったり変形することで、股関節の骨が破壊されたり変形した状態
6人の医師がチェック 93回の改訂 最終更新: 2022.03.18

Beta 変形性股関節症のQ&A

    変形性股関節症の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減ったり、股関節が変形したりすることで起きる疾患です。原因は、発育性股関節形成不全(赤ちゃんのころに股関節を脱臼しておこる股関節の疾患)や股関節形成不全(股関節の形が悪い状態)が多く、子供の時の病気や発育障害が主なものです。

    変形性股関節症は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    国内の変形性股関節症と診断された患者さんは、人口に換算すると120万人-150万人と報告されています。男性よりも女性がなりやすく、40-50歳代からなりやすいと言われています。

    変形性股関節症が発症しやすくなる、または変形性股関節症の人が他に注意すべき病気はありますか?

    肥満の人や、激しいスポーツをする人は、変形性股関節症になりやすいと言われています。重い荷物を持つような重労働の仕事をしている人もなりやすいとされています。また、発育性股関節形成不全や股関節形成不全の既往がある方もなりやすいです。

    変形性股関節症は、遺伝する病気ですか?

    過去の研究から、変形性股関節症の発症には、遺伝的な要因が関係していると言われており、関与する遺伝子の型もわかってきています。しかし、変形性股関節症の原因となる疾患(股関節形成不全など)が遺伝している可能性もあり、検証が進められている段階です。

    変形性股関節症は、どんな症状で発症するのですか?

    主な症状は、関節に痛みを感じ、日常生活の動作に支障をきたします。最初は、立ち上がりや歩き始めに足の付け根(鼠径部)に痛みを感じます。日常生活では、長時間立っていたりすると痛みが出やすくなります。

    変形性股関節症が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    重症化すると、関節の痛みがひどくなり、安静にしているときや、夜寝ているときも痛みを感じるようになります。さらに、股関節を曲げにくくなるため、足の爪切りや靴下を履くことが難しくなります。和式トイレの使用や、正座をすることも難しくなってきます。長時間立っていることがつらくなるため、家事や仕事に支障をきたすこともあります。

    変形性股関節症は、どのように診断するのですか?

    変形性股関節症の症状がある場合は、X線(レントゲン)検査を行います。問診を行い、症状や、関節の動きを診て、X線検査の結果と合わせて診断します。必要であれば、CT検査やMRI検査を行う場合もあります。

    変形性股関節症の治療法について教えて下さい。

    治療法は、主に保存療法と手術療法の2つがあります。

    保存療法はこれ以上痛みや関節の変形をひどくしないように、関節に負担をかける動作を控えます。肥満だと、関節に負担がかかるので、ダイエットも考える必要があります。痛みがあると、なかなか運動することが難しくなり、筋力が衰えていきます。できれば、関節に負担の少ない水中運動など、痛みのない範囲で運動を続けることが大切です。

    手術療法は、保存療法ではなかなか症状が改善しない場合に選択します。

    変形性股関節症では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    手術をする場合は、入院が必要です。入院期間は手術の方法や病院によって異なりますが、一般的に骨切り術の場合は6-8週間、人工関節置換術の場合は、3-4週間程度です。その後必要であれば、リハビリ病院などへ入院したり通院したりしながら、リハビリを続けます。リハビリ病院へ入院した場合、手術してから90日以内に退院することが目標となります。

    変形性股関節症に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    関節に負担をかけないようにすることが大切です。過度の運動や、重い荷物の持ち運びなどは控えましょう。かと言って、全く運動しないと、足腰が弱り、さらに歩いたりすることが難しくなります。痛みのない範囲で、運動は続けましょう。

    人工関節を入れる手術をした場合は、脱臼してしまうため、股関節を深く曲げたり、ひねったりする動作は禁止されます。和式トイレの使用は、ゆかにしゃがんだりする動作は難しくなりますので、床での生活や布団は止め、椅子やベッドを導入することが望ましいです。脱臼してしまった場合は、再手術が必要となりますので、主治医の指示をきちんと守りましょう。

    変形性股関節症の手術にはどんな種類がありますか?

    主に、骨切り術と呼ばれる方法と、人工関節を入れる方法があります。骨切り術は、自分の骨を切る方法で、関節の向きを矯正したり、残っている関節軟骨が体重のかかっている部分に来るようにします。人工関節を入れる方法は、関節の変形が進んでいる場合に適応となります。股関節全部を取り換える「人工股関節全置換術」や、大腿骨(太ももの骨)の頭の部分だけを取り換える「人工骨頭置換術」などがあります。