カナグリフロジンとは?
カナグリフロジンは血糖値を下げる効果があり、2型糖尿病の治療に使われます。日本でも商品名カナグル®錠100mgとして流通しています。作用のしくみからSGLT2阻害薬という種類に分類されます。
カナグリフロジンの副作用として、従来は低血糖・脱水・ケトアシドーシス・腎盂腎炎などが知られていました。
糖尿病による足の切断とは?
糖尿病によって引き起こされる合併症のひとつに、足の病変があります。足に潰瘍や壊疽などが現れ、特に重症の場合は足の一部を切断せざるをえなくなります。
糖尿病による動脈硬化で全身の血行が悪くなることや、糖尿病神経障害により痛みの感覚が鈍くなることなどが原因に関わっていると考えられています。
FDAがカナグリフロジンによる足切断を警告
5月16日、アメリカの政府機関の食品医薬品局(FDA)が、糖尿病治療薬のカナグリフロジンが下肢(脚)および足の切断のリスクを増加させるとして、レーベルに最も強い警告である黒枠警告を加えるよう求めました。
臨床試験のデータから結論
FDAは警告の根拠として、2件の臨床試験の結果を参照しました。
うち1件(CANVAS試験)はカナグリフロジンと偽薬を比較したものです。偽薬のグループでは1年間に換算して患者1,000人あたり延べ2.8人が足を切断されました。対して、カナグリフロジンを1日100mg飲んだグループでは1,000人あたり延べ6.2人、カナグリフロジンを1日300mg飲んだグループでは1,000人あたり延べ5.5人が足を切断されました。
ほかの1件(CANVAS-R試験)もカナグリフロジンと偽薬を比較しています。偽薬のグループでは年間1,000人あたり延べ4.2人、カナグリフロジンのグループでは延べ7.5人が足を切断されました。
カナグリフロジンにどう注意する?
FDAはカナグリフロジンを使用中の患者に対して、脚や足に痛み・潰瘍などが現れたときにはただちに専門家に相談することを勧めています。
医療従事者に対しては、カナグリフロジンによる治療を開始する前に、患者がすでに足の切断の危険性が高い状態になっていないかを考慮することを求めています。また、カナグリフロジンを使用中の患者に足の潰瘍などが現れた場合にはカナグリフロジンを中止することを求めています。
ほかのSGLT2阻害薬は大丈夫?
カナグリフロジンと同じSGLT2阻害薬として、ほかの薬剤も各国で使われています。
日本で使われているSGLT2阻害薬には以下のものがあります。
- イプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg、スーグラ錠50mg)
- ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠5mg、フォシーガ錠10mg)
- ルセオグリフロジン(商品名:ルセフィ錠2.5mg、ルセフィ錠5mg)
- トホグリフロジン(商品名:アプルウェイ錠20mg、デベルザ錠20mg)
- カナグリフロジン(商品名:カナグル錠100mg)
- エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、ジャディアンス錠25mg)
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FDAは以前にも、カナグリフロジンやダパグリフロジン、エンパグリフロジンに対する警告を出しています。
- ケトアシドーシスについて https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm475463.htm
- 骨折・骨量減少について https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm461449.htm
- 急性腎障害について https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm505860.htm
足切断についての警告はカナグリフロジンだけを対象としています。
欧州医薬品庁(EMA)は2017年4月20日に、同じCANVAS試験とCANVAS-R試験を参照して、カナグリフロジン・ダパグリフロジン・エンパグリフロジンを使用中の患者に対して、足の切断の危険性を警告しています。
どんな薬にも副作用はあります。副作用のリスクを最小限に抑えるために、FDAのような機関などを通じて対策となる情報が共有されています。
処方された薬を自己判断でやめたり量を変えて飲んだりすることは危険です。もし心配な点があれば処方した医師に相談してください。特に、薬の使用中に心当たりのない症状や体調の変化を感じたときは、すみやかに処方した医師に伝えてください。
リスクをできる限り把握して正しく使うことが、薬の本来の利益を得るために必要です。
執筆者
FDA Drug Safety Communication: FDA confirms increased risk of leg and foot amputations with the diabetes medicine canagliflozin (Invokana, Invokamet, Invokamet XR)
Drug Safety Communications, 2017 May 16
https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm557507.htm※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。