2017.03.02 | ニュース

発熱・発疹・充血に続いて心臓病を起こす川崎病に、ステロイドの効果は?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

発熱・発疹・充血に続いて心臓病を起こす川崎病に、ステロイドの効果は?の写真

川崎病は、子どもの発熱・発疹・目の充血などを特徴とする原因不明の病気です。心臓の異常を引き起こし、心筋梗塞などにつながる場合があります。ステロイド薬による治療効果として報告されているデータの調査が行われました。

川崎病は3歳未満の子どもに多い病気です。まれに成人にも起こります。

出やすい症状に以下のものがあります。

  • 発熱
  • 皮膚の発疹
  • 目の充血
  • 舌が腫れ、表面にぶつぶつした凹凸ができる(イチゴ舌)
  • 唇が腫れ、乾燥し、亀裂・出血・かさぶたができる
  • 首に1cm以上のグリグリした塊が1個から数個できる(頸部リンパ節腫脹)
  • 手足が腫れる

また、川崎病は心臓の病気を引き起こす場合があります。特に心臓の筋肉に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)の異常が問題になります。冠動脈の異常ができてしまうと、子どもでも心筋梗塞の危険性があります

川崎病の治療は、冠動脈の異常を防ぐことが重要な目的です。

 

川崎病は原因不明ですが、免疫システムの異常な活動が関係していると考えられています。川崎病の治療では、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)が信頼されよく使われています。免疫グロブリンは体内で作られている物質です。体内に侵入した異物を排除する抗体として働きます。免疫グロブリンを薬として大量に点滴することで、川崎病の異常な免疫を調整する効果があります。

 

ほかの治療法としてステロイド薬が使われる場合もあります。

ステロイド薬は異常な免疫の活動を抑える作用があります。川崎病の治療としては、免疫グロブリンを使っても熱が下がらなかった場合などにステロイド薬を使うことが勧められています。

ステロイド薬を使って川崎病を治療したときの効果について、これまでの研究で得られたデータをまとめた研究を紹介します。

この研究では、調査時点までに報告されている研究結果と未発表の研究データを含め、採用基準を満たす研究の結果を集めて統合しました。

ステロイド薬の種類や使用期間を問わず、またほかの治療を行う前か後か、ほかの治療と同時に行ったかなども問わず採用する対象としました。

 

見つかった7件の研究が採用されました。データの解析により次の結果が得られました。

プールした解析において、副腎皮質ステロイドは川崎病に続いて冠動脈異常が発生することを減らし(オッズ比0.29、95%信頼区間0.18-0.46、907人の参加者、7件の研究、I2=55%)、結果として深刻な有害事象を引き起こすことはなく(イベントなし、737人の参加者)、死亡につながることもなかった(イベントなし、915人の参加者)。

ステロイド薬を使った場合に、冠動脈異常の発生が少なくなっていました。見つかったデータの中で、副作用が疑われる深刻な事態や死亡に至った例はありませんでした。

ほかに解熱までの期間を短く、入院期間を短くする効果なども見られました。

 

川崎病に対してステロイド薬が深刻な副作用を起こすことなく効果を現すというデータを紹介しました。

実際には状況に応じてステロイド薬を積極的に使う場面とそうでない場面が区別されます。日本小児循環器学会による『川崎病急性期治療のガイドライン』では、最初に行う治療としてIVIGと同時にIVMP(静注用メチルプレドニゾロンパルス療法;大量のステロイド薬を点滴する方法)を行うことはGrade C(勧められるだけの根拠が明確でない)とされています。

今回の結果は、これまでに報告されている用途や用法の範囲内では、ステロイド薬が期待通りの効果を発揮していたと解釈できます。

理論的に、あるいは一部の例から効果があると考えられた治療法についても、このように実際に使った結果から検証を繰り返すことで、より確実に治療法を洗練させていくことができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Corticosteroids for the treatment of Kawasaki disease in children.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 27.

[PMID: 28129459]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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