2017.01.03 | ニュース

視野が欠け失明に、緑内障の手術「水晶体摘出」はレーザーより効く?

419人の治療で比較

from Lancet (London, England)

視野が欠け失明に、緑内障の手術「水晶体摘出」はレーザーより効く?の写真

緑内障は失明の原因にもなります。原因の一つは目の隅角という部分で液体の流れが塞がることです。治療として水晶体摘出手術の効果を確かめる研究が行われました。

イギリスの研究班が、水晶体摘出手術の効果を調べた研究の結果を医学誌『Lancet』に報告しました。

この研究は、原発性閉塞隅角緑内障を対象としました。

 

緑内障の原因の一つが、目の中にあるレンズ(水晶体)の前を満たしている液体(房水)が溜まりすぎることです。

房水は正常な目では隅角(ぐうかく)という部分を通って流れ出ていくことで一定の圧に保たれています。しかし隅角が塞がっていると房水が溜まって圧力がかかり、網膜にも負荷がかかって視野の一部が欠けるなど緑内障の症状が現れます。この場合を閉塞隅角緑内障と言います。

隅角が塞がる原因として、近くにある組織の炎症などがありますが、原因が見つからない場合も多く、原因不明という意味の「原発性」と呼びます。

閉塞隅角緑内障の治療として、レーザーで黒目の部分(虹彩)に穴を開けることにより房水を逃がす方法があります(レーザー周辺虹彩切開術)。

ほかに、水晶体を人工レンズに置き換えることで隙間を作る手術もあります。この手術が水晶体摘出です。

水晶体摘出は白内障の治療などでよく行われています。場合にもよりますが日帰りで手術でき、白内障ではかすんで見えにくかった目がよく見えるようになります。ただし、人工レンズには人間の目のようにピントを調節する機能がありません。特に単焦点レンズの場合は、近すぎたり遠すぎたりするものにピントが合わないため、眼鏡が必要になります。緑内障に対しては、房水が通る隙間を作る狙いで行われます。

 

研究班は、対象とした原発性閉塞隅角緑内障(または原発性閉塞隅角があり眼圧が30mmHg以上)の患者419人をランダムに2グループに分けました。

  • レーザー周辺虹彩切開術と薬で治療するグループ
  • 水晶体摘出手術をするグループ

治療後36か月時点で、健康状態の質問票と目の検査を使って状態を評価しました。

 

次の結果が得られました。

水晶体摘出のあとは、標準治療のあとに比べて、EQ-5Dで評価した健康状態スコアの平均(0.87、標準偏差0.12)が0.052高く(95%信頼区間0.015-0.088、P=0.005)、平均眼圧(16.6mmHg、標準偏差3.5)が1.18mmHg低かった(95%信頼区間-1.99から-0.38、P=0.004)。

不可逆的失明は水晶体摘出を受けた参加者のうち1人、標準治療を受けた参加者のうち3人に起こった。深刻な有害事象が起こった患者はいなかった。

水晶体摘出をしたグループのほうが健康状態が良好で、眼圧も低くなっていました。失明した人は手術のグループでは1人、レーザー治療のグループでは3人でした。治療による深刻な事故などが起こった人はいませんでした。

 

原発性閉塞隅角緑内障に対して水晶体摘出の効果を示すデータが得られました。水晶体摘出が重要な治療法として今後も行われるうえで、治療法を選ぶための参考にされるかもしれません。

緑内障にはほかにもさまざまな原因と状態の違いがあり、治療法も使い分けられています。それぞれの場合に対応するデータが残されることで、適した治療法を選ぶ役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effectiveness of early lens extraction for the treatment of primary angle-closure glaucoma (EAGLE): a randomised controlled trial.

Lancet. 2016 Oct 1.

[PMID: 27707497] http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)30956-4/abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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