2016.11.08 | ニュース

2歳のインフルエンザを予防、2015-2016年のワクチンの実績

フィンランドの統計から

from Euro surveillance : bulletin Europeen sur les maladies transmissibles = European communicable disease bulletin

2歳のインフルエンザを予防、2015-2016年のワクチンの実績の写真

今年のインフルエンザワクチンは打ちましたか?かかった人の報告数は例年よりやや早いペースで増えつつあります。去年の統計から、2歳児がインフルエンザワクチンを打つことでインフルエンザが予防されていたことが報告されました。

フィンランドの研究班が、2015年から2016年にまたがるひと冬(以下「2015/16年」)の統計からインフルエンザワクチンの効果を計算し、結果を専門誌『Eurosurveillance』に報告しました。

研究班は、フィンランド全国の統計から、ワクチンを接種した子どもと接種していない子どもを合わせて55,258人分のデータを解析しました。

ワクチンを接種した子どもと接種していない子どもを比べて、検査でインフルエンザと確認された人数が減っているかを計算しました。

 

2015/16年の予防接種として、フィンランドでは2種類のインフルエンザワクチンが使われました。

  • 3価不活化ワクチン
  • 4価経鼻生ワクチン

不活化ワクチンというのは、インフルエンザウイルスを殺して感染力をなくしたものを注射するワクチンです。日本で普通に使われているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。

経鼻生ワクチンというのは、鼻からスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。生きたウイルスをワクチンとしたものです。鼻の粘膜で免疫力を発揮する「IgA」というタイプの抗体が作られるという考えで使われます。

3価・4価というのは、ワクチンが対応しているウイルスの数を現します。ワクチンとウイルスの型が一致しなければ高い予防効果が発揮できないのですが、どの型のウイルスが流行するかは正確に予測できないので、3価ワクチンは3種類、4価ワクチンは4種類のウイルスを防ぐように作られています。

3種類よりも4種類に対応したワクチンのほうが、型が一致しやすいと考えられます。

つまり、4価ワクチンのほうが予防効果を現しやすいと考えられます。日本では2015/16年の予防接種から、以前の3価不活化ワクチンをやめて、4価不活化ワクチンが使われています。

ここで紹介する統計では、経鼻生ワクチンとして4価ワクチンが使われている分、経鼻生ワクチンに有利な条件で予防接種が行われています。

 

対象者55,258人のうち、経鼻生ワクチンを使った子どもは8,086人、不活化ワクチンを打った子どもが4,297いました。

統計解析の結果、4価経鼻生ワクチンによる予防率は51%、3価不活化ワクチンによる予防率は61%と計算されました。

 

インフルエンザの経鼻生ワクチンと不活化ワクチンの効果は、報告によって幅があり、どちらが効くのかは最近まで意見がまとまっていませんでした。

2016/17年の予防接種については、アメリカの政府機関である疾病管理予防センター(CDC)から、経鼻生ワクチンは使うべきでないという意見が示されています。

ここで紹介した研究でも、経鼻生ワクチンは4価という有利な条件にもかかわらず、不活化ワクチンよりも計算上低い予防率しか出せていません。

インターネットの噂などで「日本のインフルエンザワクチンは粘膜に抗体を作らないので効かない」という憶測がときどき語られますが、実際の結果は不活化ワクチンのほうが効いているように見えます。憶測ではなく実際の結果を見なければ、本当に効いているかどうかはわかりません。

日本ではインフルエンザの経鼻生ワクチン(商品名フルミスト®など)は承認されていません。一部の医療機関が提供していますが、もし見かけることがあっても、普通の注射するワクチンを打ってください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effectiveness of the live attenuated and the inactivated influenza vaccine in two-year-olds - a nationwide cohort study Finland, influenza season 2015/16.

Euro Surveill. 2016 Sep 22.

[PMID: 27684447]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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