チリ・チロエ島で見つかった3人のツツガムシ病患者
チリの南部にあるチロエ島で見つかったツツガムシ病患者3人の例が、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。
ツツガムシ病は、アジアを中心として、パキスタン、ロシア、オーストラリアを結んだ三角形の範囲内に存在します。これまでに報告されている感染者はほとんどがこの範囲にとどまっています。
ツツガムシ病はツツガムシというダニの一種に咬まれることで感染します。病原体はオリエンティア・ツツガムシという特殊な細菌です。テトラサイクリン系抗菌薬(抗生物質)が有効ですが、普通の細菌に対してよく使われるペニシリン系抗菌薬などは無効です。このため、予想外の地域でツツガムシ病が発生したとき、正しく診断できなければ、治療の遅れにつながります。
2015年1月に見つかった38歳女性
38歳の女性が、発熱と全身の発疹を訴えて入院しました。
2週間前に森で薪を集めてから腹部にかゆみのある皮疹ができ、壊死して黒いかさぶたになっていました。7日前から腹痛、4日前からは胸部の皮疹、高熱、頭痛、筋肉痛が現れていました。
入院翌日にドキシサイクリン(テトラサイクリン系抗菌薬)を使う治療が行われ、24時間以内に解熱しました。
2016年1月に見つかった40歳男性
40歳男性が、突然の高熱、寒気、寝汗、頭痛、筋肉痛、目の奥の痛み、光線恐怖と、2日後に現れた皮疹と黒い壊死病変を訴えて受診しました。
細菌感染症が疑われ、クロキサシリン(ペニシリン系抗菌薬)で治療されましたが、改善がありませんでした。2日後にドキシサイクリンが開始され、1日以内に解熱しました。
2016年2月に見つかった55歳男性
55歳男性が、全身の皮疹と壊死した黒いかさぶたを訴えて受診しました。その3週間前から高熱、寒気、寝汗、頭痛、筋肉痛、関節痛がありましたが、発熱などの症状は1週間ほどで消失していました。ドキシサイクリンで治療されました。
ツツガムシ病は南米にもいた?持ち込まれた?
研究班は、ツツガムシ病の病原体がどのようにしてチロエ島に住み着いているかは不明であるものの、「この地域でツツガムシ病の病原体が常在しているかもしれないことが示唆される」と述べています。
これまでも気付かれずに存在していたのか、最近ほかの地域から持ち込まれたのかなどはまだわかりません。
ここで報告されている3人は、幸いにも早く診断がつき、適切な治療が受けられました。しかしツツガムシ病は悪化すると死に至ることもある危険な病気です。
3人の共通点として、全員が薪を集めるか薪を取り扱っていたことが挙げられています。ツツガムシは大きさ1mm未満です。草や木の多い場所に立ち入るときは服装で肌を守ること、その場を離れたら体を洗い流すことが勧められています。日本でも全国で発生例があるため、気を付けて身を守ってください。
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。