◆口の中の細菌は膵臓がんと関係するか?
ここで紹介する研究は、2016年4月のアメリカがん研究協会の集会で発表されたものです。
研究班は、膵臓がんの患者361人と、膵臓がんがない371人の患者のデータを比較しました。
対象者として、診断される前の時点で口の中の細菌の検査が行われていた人が選ばれました。
細菌のデータから、膵臓がんが発生した人としなかった人で、口の中にいた細菌に違いがあったか、統計解析により検討されました。
◆膵臓がんが多い菌、少ない菌
次の結果が得られました。
口の病原体を持っていることは、膵臓がんのリスクがより高いことと関連し、ポルフィロモナス・ジンジバリスがいるときは調整オッズ比1.59(95%信頼区間1.15-2.20)、アグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンスがいるときは調整オッズ比2.19(95%信頼区間1.15-4.15)だった。
フゾバクテリウム門が相対的により多いことは膵臓がんリスクの減少と関連した(菌量の1%増加に対してオッズ比0.92、95%信頼区間0.87-0.98)。
口の中にポルフィロモナス・ジンジバリス、またはアグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンスがいた人は、その後膵臓がんが発生することが多くなっていました。
反対に、フゾバクテリウムに分類される細菌が多かった人は、その後膵臓がんの発生が少なくなっていました。
研究班は、「この研究は[...]膵臓がん予防のために実現可能な手段を示しているかもしれない」と述べています。
この結果だけでは細菌が膵臓がんの原因に関係しているかどうかは確かとは言えませんが、関係するかもしれないという仮説が得られました。
もし関係があるなら、口の中の細菌のバランスを整えることで膵臓がんを予防する方法が将来作り出されるかもしれません。
執筆者
Human oral microbiome and prospective risk for pancreatic cancer: a population based, nested case control study.
American Association for Cancer Research Annual Meeting. 2016 Apr 19.
http://www.abstractsonline.com/Plan/ViewAbstract.aspx?sKey=d1dd4543-de9b-4b2c-afe5-7588e64f2023&cKey=612259c9-4269-4953-a31f-527a1f9188cb※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。