「夜間に排尿のために1回以上起きる」状態を医学用語で夜間頻尿と言います(詳しくは前回のコラムで説明しています)。そして、夜間頻尿の原因はいくつか考えられますが、ここでは「夜間の尿量が多いパターン」と「膀胱や前立腺に問題があるパターン」「不眠症」の3つに分けて考えていきます。
1. 夜間の尿量が多いパターン
膀胱に一定量の尿が溜まると、それを脳が感じて、排尿したくなるようにできています。そのため、夜間に膀胱に溜まる尿量が増えすぎると、睡眠中でも目が覚めてしまうのです。
では夜間の尿量が多くなる原因にはどういったものがあるでしょうか。
【夜間の尿量が多くなる主な原因】
- 水分の過剰摂取
- 病気
- 心不全
- 高血圧症
- 糖尿病
- 薬の副作用
水分の摂りすぎという単純な原因から、心臓の病気や高血圧症、糖尿病まで様々なものが夜間の尿量が増加する原因になります。 水分量が過剰かどうかは普段どんな飲み物をどのくらい飲んでいるかを把握することが重要なので、受診する際には、1週間ほど摂取した水分量・種類を記録しておくとよいです。
(記録の例)
- ◯月◯日
- 朝・水コップ1杯、コーヒー1杯
- 昼・ペットボトルのお茶500mL
- 夜・缶ビール2本、水コップ1杯
- ◯月◯日 同上
また、持病や服用している薬が詳しく分かれば、お医者さんが原因を推測しやすくなります。診察を受ける際には治療中の病名をメモしておいたり、お薬手帳を利用すると上手に伝えることができます。
2. 膀胱や前立腺に問題があるパターン
膀胱や前立腺の病気の中には夜間頻尿の原因になるものがあります。その場合、夜間の尿量が多いパターンとは違う形で夜間頻尿を起こしてしまいます。
【夜間頻尿の原因となる主な膀胱・前立腺の病気】
- 前立腺肥大症
- 過活動膀胱
前立腺肥大症は前立腺が大きくなる病気です。男性に特有の病気で、加齢とともにかかる人が増えます(詳しくは「前立腺肥大症の詳細情報」を参照)。
過活動膀胱は、膀胱が過敏な状態になり、尿が少量しか膀胱に溜まってなくても排尿したくなる病気です。女性に多いことが知られています(詳しくは「過活動膀胱の詳細情報」を参照)。
これらの病気を治療することで、症状の改善が望めますので、夜間頻尿に悩んでいる人はこういった病気が背景に隠れていないかを受診して診てもらう必要があります。
3. 不眠症
なかなか寝付けなかったり、寝た後に何度も目が覚める不眠症がある人は夜にトイレに多く行きがちなことが知られています。夜間頻尿と関連が見えにくく感じるかもしれませんが、不眠症をうまくコントロールすることで夜間頻尿の改善が期待できます。
これといった原因がない場合、まずは水分摂取の記録を!
ここまでで、代表的な夜間頻尿の原因について説明しました。夜間頻尿がある人の中には、持病も常用薬もないという人がいるかもしれません。特に思い当たる節がない人では「水分の過剰摂取」が原因になっていることがしばしばあります。ですので、まずは1日に摂取した水分の量・種類と夜間の排尿回数を記録してみることをお勧めします。
「夜間頻尿診療ガイドライン」では1日あたりの水分量を体重の2%(例:60kgの人では1.2L)にし、1日分の尿量を指標*にして水分摂取量を調節するようにとあります。しかし、日常生活の中で尿量を測定するのは簡単ではありません。そこで、まずは飲み物の量を調べてみるとよいです。
記録をとってみると、意外とたくさん飲んでいたということは珍しくはありませんし、夜間の尿量に影響が大きい夕方以降の水分量が多かった、という発見があるかもしれません。記録から得た気づきをもとに水分量を調節するだけで、夜間の排尿回数が減るかもしれないので、ぜひチャレンジしてみてください。
*体重1kgあたり30mL(例:体重60kgの場合は1800mL)または1日の尿量が1500mLなるように水分量を調節する
今回は夜間頻尿の原因について説明しました。持病があったり、常用薬がある人はかかりつけのお医者さんに相談することをお勧めしますし、思い当たる節がない人は手始めに水分量を記録してみることをお勧めします。 このコラムが皆さんの安眠の助けになれば幸いです。
執筆者
日本排尿機能学会, 日本泌尿器科学会/編, 夜間頻尿診療ガイドライン(第2版),リッチヒルメディカル, 2020
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。