2020.05.05 | コラム

研修医はどんなことをしている?制度上の立場、病院での仕事内容、生活について

「研修医」の実態について紹介します
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「研修医」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、研修医が実際にどのような立場で働き、どのような生活をしているかについては広く知られていないかもしれません。

筆者は先日、医療関係ではない知人から「新型コロナ関連で人手が足りないから研修医も現場に出るかもしれないんだって?医療崩壊だねー。」と言われ、違和感を覚えました。実際には多くの研修医がもともと、中〜大規模病院を中心に現場の最前線で働いているからです。

今回のコラムでは医療関係以外の人にも理解して頂けるように、研修医になるまでの過程と、その立場・仕事・生活面を紹介していきます。

 

1. 研修医は医師なのか?

まずは医学生を経て研修医になるまでの流れを解説します。

 

医学生

研修医になるためには、6年制の医学部医学科を卒業する必要があります。大学によってカリキュラムは異なりますが、主に1-2年生で医学以外の幅広い教養科目を、2-3年生で生化学・解剖学・免疫学・薬理学・微生物学・法医学など多岐にわたる「基礎医学」を履修します。その後、3-4年生で内科・外科・産婦人科・小児科・救急科など「臨床医学」を座学で学び、4-6年生で大学病院を中心とした医療機関で実際に患者さんにお会いしたりして実習します。

 

研修医

そうして大学規定の単位を修得し、6年生の2月に医師国家試験を受験して合格すれば、医師免許を手にして医籍に登録することができます。多くの国家試験合格者は4月から研修医として全国各地の病院で働き始めます。大学入試から研修医になるまでには多くの試験があるので浪人や留年も多いですし、医学部再受験の人もいるので決して全員に当てはまるわけではありませんが、もしストレートで進学・進級していれば24歳で研修医になれます。こうして通常は2年間の研修医生活が始まるわけですが、一般的な学部の人よりも少なくとも2年は社会に出るのが遅いわけです。

ここまで書いた通り、研修医は既に医師免許を持って全国各地の医療機関で働いている医師ということになります。

 

医師になるまでの流れ、研修医とは?

 

2. 研修医の制度上の立場は?

次に、研修医がどのような制度のもとで仕事をしているか解説します。

 

研修医(初期研修医)

医師臨床研修制度は2004年にシステム化されました。医師免許取得後に患者さんを診る仕事をしていくためには、まず研修医として2年以上にわたり国の指定を受けた研修病院や大学病院で研修を受けるルールが医師法によって定められています。研修期間は2年としている病院がほとんどですが、まれに3年など独自の期間を設定している病院もあります。研修病院は全国に1,000箇所強あり、医学部6年生の多くは夏頃に就活のようにして各病院に面接などの試験を受けに行きます。一部の例外を除いて研修病院の選び方は自由なので、卒業した大学と異なる都道府県で働いたり、異なる大学病院で研修することもよくあります。

 

後期研修医

「後期研修医」という用語が使われる場合もあるので、誤解のないように解説しておきます。後期研修医とは臨床研修制度の2年間を修了した後の数年間、つまり医師免許取得後3-5年目くらいの医師を指して使われることの多い用語です。後期研修は厚生労働省のシステムとして明確に定められたものではなく、各学会や医療機関で独自の制度があったり、慣習的に呼ばれているだけの立場となります。「専攻医」「専修医」などと呼ばれることもあります。一方で、単に「研修医」と呼ぶ場合には通常は後期研修医ではなく、国の制度下で研修する最初の2年間のことを指します。後期研修医と明確に区別するために、研修医のことを「初期研修医」と呼ぶこともあります。

 

3. 研修医の業務内容は?

研修医の間には内科、外科、産婦人科、小児科、救急科、精神科など様々な科を回ることが定められており、専門分野を固定して働き始めるのは初期研修後となります。そのため、研修医2年目ともなればかなり幅広い知識・技術を持つようになります。しかし、専門性には乏しいので、1人で重要な判断をする場面はなるべく避けなくてはなりません。したがって、患者さんと1:1が主である一般外来診療を担当することは基本的にありません。上級医と相談する余裕のある病棟業務や、救急外来での仕事が主になります。

*上級医:2年間の研修を修了していて、研修医を直接指導する立場の医師

 

研修医は既に医師免許を持っているれっきとした医師なので、やや大掛かりな処置や、簡単な手術などを行うこともあります。最初のうちは上級医に手取り足取り教えられながらという具合ですが、次第に上級医は見守る役、というようになります。大学病院よりは市中病院(大学病院以外の病院のことを指す)、都会よりは地方の方が医師が少ないので、市中病院や地方の病院では研修医が主戦力として救急外来や病棟業務を担っていることも珍しくありません。ただし、一般外来業務や重要な病状説明などは基本的に上級医が対応するため、研修医の働きは患者さんからは見えにくいかもしれません。その面で研修医は縁の下の力持ちとも言えそうです。

 

4. 研修医は忙しい?

研修医と聞くと「忙しそう」というイメージを持つ人もいるかもしれません。実際に、朝から晩まで働き、寮や家に帰ったら病院から呼び出しの電話が鳴り、毎週当直業務をこなす、という多忙な研修医も多くいます。また、知識や経験が十分ではない状態で患者さんを担当する精神的プレッシャーも大きいです。専門的な判断が求められない、いわゆる「雑用」を任されやすい面もあります。

一方で近年は働き方改革が叫ばれ、研修医の働き方はかなり改善してきています。なるべく研修医に残業をさせない、病院からプライベートの電話にはかけない、当直はなし、などの取り組みが広がっています。特に大学病院などでは研修医を守る動きが進んでおり、研修医は最も働き方改革の恩恵を受けている医師とも言えそうです。しかし全体の業務量が減ったわけではないので、そのぶん上級医にしわ寄せが来ているようです。

 

5. 研修医はお金に困っている?

研修医と聞くと「忙しくて給料が安い」というイメージを持つ人もいるかもしれません。実際2004年に臨床研修制度ができるまでは、病院からの月給は数万円-10万円ほどで、夜間や休日に別の医療機関で非常勤医師などのアルバイトをして何とか生計を立てていました。しかし2004年以降は制度が確立され、研修医のアルバイトが禁止になる一方で病院からそれなりの給与が支払われるようになりました。

現在では研修医の年収は300-500万円ほどが一般的となっています。大学病院よりは市中病院、都会よりは地方のほうが給与は高くなる傾向にあります。一般的な勤務医と比較すると見劣りする年収ですが、新卒社会人として考えれば決して少なくない額と言えそうです。

 

ここまで研修医の実態について紹介しました。家や寮と病院の往復生活がメインの研修医も多く、みなさんは普段関わることが少ないかもしれません。縁の下の力持ちとして入院患者さんや救急患者さんを診療しながら研鑽を積む研修医について、このコラムが理解を深めるきっかけとなれば幸いです。

 

執筆者

福田 健介

参考文献

・厚生労働省:医師臨床研修制度のホームページ

・厚生労働省:医師臨床研修指導ガイドライン 2020年版

(2020.4.24閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。