必要な人が血液をサラサラな状態にしておくことは非常に大切ですが、一方で血が固まりにくくなることによる副作用が問題になることがあります。本コラムでは血液をサラサラにする薬を飲んでいる人に注意して欲しい点についてお話ししていきます。
1. 血液をサラサラにする薬には何がある?
注意点についてお話しする前に、具体的にどのような薬が血液をサラサラにする薬なのか紹介します。血液をサラサラにする薬は大きく抗血小板薬と抗凝固薬に分けられます。
【抗血小板薬】
【抗凝固薬】
- ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)
- ダビガトラン(商品名:プラザキサ®)
- リバーロキサバン(商品名:イグザレルト®)
- アピキサバン(商品名:エリキュース®)
- エドキサバン(商品名:リクシアナ®)
抗血小板薬と抗凝固薬はどちらも血液をサラサラにする薬ですが、その仕組みは異なっており、病気ごとにどちらを使用したほうが良いかは変わります。また、病気の種類によっては、2種類の抗血小板薬や、抗血小板薬と抗凝固薬を組み合わせて処方されることもあります。
2. 血液をサラサラにする薬を飲んでいる人に注意してほしいこと
血液をサラサラにする薬は脳梗塞、心筋梗塞など命に関わることもある病気の治療に必要な薬です。一方で、これらの薬を飲んでいると出血が止まりにくくなるので注意が必要です。
【血液をサラサラにする薬を飲んでいる時に注意すること】
- 転倒・打撲しないように気をつける
- 日常的な出血に注意する
- 検査や手術前に薬の中止が必要な場合がある
- 他の薬との飲み合わせに注意する
- 食事に注意が必要な薬がある
それぞれ以下で詳しく説明していきます。
転倒・打撲しないように気をつける
血が止まりにくい状態になっているため、通常ではあまり問題にならないような転倒や打撲であっても大きな出血につながることがあります。そのため、転びにくい靴を履く、雨の日の外出時には一層気をつけるなど、日頃から転倒や打撲しないための注意が必要です。特に頭をぶつけると、命に関わる脳出血を起こすことがあります。もし頭をぶつけてしまった後に、頭痛、吐き気、反応が悪いといった変化がある場合にはすぐに医療機関を受診してください。また、頭をぶつけてから1ヶ月近く経ってからこれらの症状があらわれること(慢性硬膜下血腫)があります。頭をぶつけてからしばらくの間は、様子に変化がないか注意してください。
日常的な出血に注意する
通常であれば心配のない、日常的な出血への注意も重要なポイントです。血液をサラサラにする薬を飲んでいる間は、鼻血や生理の出血がひどくなったりすることがあります。止血処置が必要な場合もありますので、ダラダラと出血が続き、止まりにくい場合には医療機関を受診してください。
また、薬が原因で血便や血尿が出ることがあります。血便や血尿は他の病気のサインであることもあるので、原因をはっきりせるために受診して調べてもらってください。
検査や手術前に薬の中止が必要な場合がある
生検といって身体の一部をメスなどで切り取って調べる検査や、治療のために手術を受ける時には、出血量が多くなるのを避けるために、血液をサラサラにする薬を中止しなければなりません。内服している人は必ず医療者に伝えてください。
中止するタイミングは薬の種類によって異なるため、検査や手術前には担当のお医者さんから内服を止める時期を指示されます。血液をサラサラにする薬が中止されていないと、検査や手術が延期になる場合もあるので注意してください。
他の薬との飲み合わせに注意する
血液をサラサラにする薬は他の薬の影響で、作用が強くなったり、弱くなったりしてしまうことがあります。そのため、飲み合わせに注意が必要な薬です。もし、血液をサラサラにする薬をもらっている所と別の病院を受診する時には、お薬手帳を見せたりなどして今飲んでいる薬があることを伝えて、飲み合わせに問題がないか確認するようにしてください。
食事に注意が必要な薬がある
血液をサラサラにする薬の一つ、ワーファリンという薬を飲んでいる人は、食事にも気を配る必要があります。ワーファリンはビタミンKの働きを抑えることで血液をサラサラにする作用を発揮します。そのため、ビタミンKを多く含む食品を過剰に摂ってしまうと、せっかくのワーファリンの効果が減ってしまいます。具体的には、納豆、クロレラ、青汁などが多くのビタミンKを含んでおり、ワーファリンを飲んでいる場合には摂取しないことが望ましいです。
日本社会の高齢化に伴い、脳梗塞や心筋梗塞などの病気の治療や予防目的に、血液をサラサラにする薬を処方されている人は増えています。安全に使用するために、ここで挙げた注意点に気をつけながら、薬を使っていただければ幸いです。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。