アメリカ合衆国2008年-2015年のライム病の統計
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の研究班が、2008年から2015年の統計をもとに、米国内のライム病の発生動向の様子をまとめ、広報誌『Morbidity and Mortality Weekly Report』で報告しました。
米国内ではライム病の疑いがある人は全例の統計が取られています。
ライム病は日本での発生は少ないですが、米国では年間数万人がかかる病気です。皮膚や関節などに多様な症状をあらわし、治療には有効な抗菌薬があります。
累計27万件、うち95.2%が14州からの報告
ライム病の発生地域について次の結果がありました。
2008年から2015年の間に、計275,589件のライム病がCDCに報告された(確定例208,834件、疑い例66,755件)。報告期間に、多くの症例は引き続き、発生率の高い北東部、中部大西洋岸、北中西部から報告されているが、それらの州の多くで症例数は安定しているか減少した。対して、発生率の高い地域に隣り合う州では症例数が増加した。
2008年から2015年に報告されたライム病(確定またはライム病の疑い)は累計で275,589件でした。すべての報告例のうち95.2%は、発生率の高い次の14州から報告されていました。
- コネティカット州
- デラウェア州
- メイン州
- メリーランド州
- マサチューセッツ州
- ミネソタ州
- ニューハンプシャー州
- ニュージャージー州
- ニューヨーク州
- ペンシルバニア州
- ロードアイランド州
- バーモント州
- バージニア州
- ウィスコンシン州
これら14州の中で、年間人口10万人あたりの確定例数は、ニューハンプシャー州で2008年の92.0件から2015年の32.8件に減少するなどの例もあり、合計で0.29%減少していました。
また14州に隣り合う以下11州とワシントンDCでは、年間人口10万人あたりの確定例数がウェストバージニア州で2008年の6.5件から2015年の13.2件に増加するなど、合計で6.6%増加していました。
- イリノイ州
- インディアナ州
- アイオワ州
- ケンタッキー州
- ミシガン州
- ノースカロライナ州
- ノースダコタ州
- オハイオ州
- サウスダコタ州
- テネシー州
- ウェストバージニア州
地域以外の情報については従来通りの傾向が確かめられました。
- 7月第1週をピークとして夏に多い
- 男性がわずかに多い
- 5-9歳と50-55歳に多い
- 出やすい症状は遊走性紅斑(72.2%)、関節炎(27.5%)など
- 心筋炎(1.5%)、神経学的所見(12.5%)を引き起こすことがある
マダニから感染する病気に注意
アメリカでのライム病の統計を紹介しました。特に多い州に大半が集中しているものの、隣り合う州でも報告数が増えているという結果がありました。
ライム病の発生数が多い州には、日本からも旅行や仕事で多くの人が訪れます。ライム病の発生はマダニが盛んに活動する夏に増えます。マダニがいる繁みなどに入らない、虫除けを使うなどが勧められています。マダニはライム病のほかにも重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などを感染させる恐れがあり、咬まれないよう対策することは大切です。
ライム病の発生数が多い地域はもちろん、マダニがいる場所に近付くことがあれば、マダニの対策にはよく気を付けてください。
執筆者
Surveillance for Lyme Disease - United States, 2008-2015.
MMWR Surveill Summ. 2017 Nov 10.
[PMID: 29120995]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。