成人の早期ホジキンリンパ腫に対する化学療法と放射線療法
ホジキンリンパ腫は血液の中にあるリンパ球という細胞から発生するがん(悪性腫瘍)です。正常なリンパ球は免疫機能を担当し、体から異物を排除するなどの役割を持っています。リンパ球ががん化して悪性リンパ腫となると、全身にあるリンパ節の数か所が腫れて大きくなるなどの症状から気付かれます。ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の一種です。
ドイツとデンマークの研究班が、成人の早期ホジキンリンパ腫に対して化学療法(抗がん剤治療)と放射線療法を併せて行う効果を化学療法のみの効果と比較し、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この研究は過去の研究報告からデータを集める方法で行われました。2011年にも同様の調査が行われていましたが、より新しい研究も調査範囲に含め、子供を対象とした研究は除くなどして改めて調査がなされました。
生存期間の差は不明、進行が遅くなる
調査から次の結果が得られました。
1,388人の患者による5件の試験が、化学療法だけの組み合わせと化学療法・放射線療法を比較し、どちらの群でも化学療法のサイクル数は同じとしていた。
調査対象の中で、化学療法だけの治療と化学療法に放射線療法を加えた治療を比較し、化学療法の期間(サイクル数)はどちらの治療法でも同じとした研究が5件見つかりました。
放射線療法を加えることで、全体として生存期間が延びるというはっきりした証拠はありませんでした。
しかしホジキンリンパ腫が進行するまでの期間に着目すると次の結果でした。
化学療法のみに比べると、化学療法と放射線療法を使用することで無増悪生存期間は改善した(ハザード比0.42、95%信頼区間0.25-0.72、P=0.001、中等度の質の証拠)。
放射線療法を加えたほうが、ホジキンリンパ腫が進行することなく生存した期間は長くなると見られました。
放射線療法を加えるかどうかによって化学療法のサイクル数を変えていた研究については、進行なく生存した期間に差は確かめられませんでした。
早期ホジキンリンパ腫には放射線を使ったほうがいい?
早期ホジキンリンパ腫に対して、化学療法だけに比べて化学療法に放射線療法を加えたほうが進行なく生存する期間が長いとする報告を紹介しました。
ただし、放射線療法を加えても化学療法は同じだけ行うという条件があります。
がん治療には複数の選択肢がある場面も多く、どの組み合わせが最適かは複雑な議論になります。実際に比較した試験のデータがまとまっていることで、治療を選ぶ参考として役立てることができます。
執筆者
Chemotherapy alone versus chemotherapy plus radiotherapy for adults with early stage Hodgkin lymphoma.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr 27.
[PMID: 28447341]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。