言葉で野菜を魅力的に見せる実験
スタンフォード大学の研究班が、大学のカフェテリアに並んでいる野菜につける説明の言葉を変えることで消費量に違いがあるかを実験し、医学誌『JAMA Internal Medicine』に報告しました。
この実験では、野菜についたラベルの説明を4パターンに変えることで、野菜を選んだ人の数と野菜が消費された量に違いがあるかを調べています。
ラベルは日毎に次の4パターンのうちどれかが表示されました。
- 甘やかし
- 標準的
- 健康的(体に悪いものがないことを強調)
- 健康的(体に良いものがあることを強調)
たとえば次のような表示が使われました。
- ダイナマイト・チリにピリッとライム味のビート
- ビート
- ダイエット無糖ビート
- 抗酸化ビート
- バターたっぷりローストスイートコーン
- コーン
- 減塩コーン
- ビタミン豊富なコーン
- 甘さしたたるさやいんげんとパリパリのエシャロット
- サヤインゲン
- ローカーボダイエットさやいんげんとエシャロット
- ヘルシーエナジーさやいんげんとエシャロット
- さわやかジンジャーとターメリックのスイートポテト
- サツマイモ
- コレステロールゼロのさつまいも
- 健康スーパーフードのさつまいも
- ツイストの効いたニンニクとショウガ風味バターナット・スクワッシュのくし切り
- バターナット・スクワッシュ
- 無糖バターナット・スクワッシュ
- 抗酸化物質豊富なバターナット・スクワッシュ
- じっくりローストしたひとくちカラメルズッキーニ
- ズッキーニ
- ダイエットズッキーニ
- 栄養満点グリーンズッキーニ
- ピリッとショウガ味チンゲン菜とバンザイしいたけ
- チンゲン菜とキノコ
- 減塩チンゲン菜とキノコ
- 健康チンゲン菜とキノコ
- ツイストの効いた人参の柑橘グラッセ
- にんじん
- 人参の砂糖なし柑橘ドレッシング
- ビタミンCでスマート柑橘にんじん
おいしそうなラベルが一番選ばれる
研究期間にカフェテリアで食事をした27,933人のうち、8,279人が野菜を取りました。
ラベルの種類ごとに見ると、野菜を取った人数、野菜が消費された量ともに、「甘やかし」のパターンのラベルをつけた場合が一番多くなりました。
体に悪いものがない点を強調するラベルに比べて、「甘やかし」のパターンのラベルがついていたときは、選ぶ人の数が41%多くなりました。消費量は33%多くなりました。
研究班は考察として「この結果から、成人の野菜の消費量を増やすための頑健で応用可能な戦略が提示される:ほかの健康的ではないがより人気の高い食べ物と同じように、人を甘やかし、エキサイティングで、おいしそうな描写を使うことである」と述べています。
健康にいいものを食べたいですか?
ラベルの表示によって野菜の消費に影響があったという報告を紹介しました。
食べ物が「体にいい」と言われて食べたいと思うか、むしろ関心をなくすかは人によってかなり違うと思われます。アメリカの食文化の中で行われた実験が日本にも当てはまるとは限りません。
しかし、体にいい食べ物を食べてもらうためには単純に健康を強調するだけの説明が本当にいいのだろうかという問題意識は興味深いものです。健康情報のあり方にふとした気付きを与えてくれる研究ではないでしょうか。
執筆者
Association Between Indulgent Descriptions and Vegetable Consumption: Twisted Carrots and Dynamite Beets.
JAMA Intern Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print]
[PMID: 28604924]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。