2017.06.12 | ニュース

変形性膝関節症の軟骨破壊にステロイドの関節内注射は効く?

140人で2年の試験

from JAMA

変形性膝関節症の軟骨破壊にステロイドの関節内注射は効く?の写真

変形性膝関節症は、加齢などにより膝の軟骨がすり減って痛みなどの症状が現れている状態です。ステロイド薬の関節内注射による効果が検討されました。

アメリカの研究班が、変形性膝関節症の患者を対象にトリアムシノロンアセトニド関節内注射の効果を調べ、結果を医学誌『JAMA』に報告しました。

この研究は、症状がある変形性膝関節症の患者で、超音波検査により滑膜炎が見つかっていて、重症度の分類(グレード0から4)でグレード2または3の人を対象としました。

滑膜炎は、関節の内部にある関節滑膜の炎症です。変形性膝関節症でも滑膜炎は起こります。滑膜炎が軟骨の破壊にも関わっている可能性があります。

トリアムシノロンアセトニドはステロイド薬の一種です。ステロイド薬は痛みや炎症を抑える作用があります。その一方で、骨粗鬆症などの副作用も知られています。

140人の患者が対象となりました。対象者はランダムに2グループに分けられ、トリアムシノロンの関節内注射を打つグループ、比較のため生理食塩水を打つグループとされました。どちらのグループでも12週ごとに2年にわたって注射を繰り返しました。

 

次の結果が得られました。

生理食塩水に比べて、関節内トリアムシノロンにより、関節容積減少は有意に大きく、インデックスコンパートメント軟骨厚の平均変化量が-0.21mm vs -0.10mm(群間差-0.11mm、95%信頼区間-0.20から-0.03mm)となった。痛みには有意差がなかった(-1.2 vs -1.9、群間差-0.6、95%信頼区間-1.6から0.3)。

関節軟骨の厚みは、トリアムシノロンの注射を打ったグループのほうが少なくなりました痛みには違いがありませんでした

治療によると思われた症状など(治療関連有害事象)は、生理食塩水のグループで3人、トリアムシノロンのグループで5人に起こりました。

研究班は「これらの結果から、有症状の変形性膝関節症の患者に関節内トリアムシノロンは支持されない」と結論しています。

 

滑膜炎のある変形性膝関節症の患者に対して、トリアムシノロンの関節内注射で軟骨の厚みや痛みに改善が見られなかったという報告を紹介しました。

ステロイド薬の関節内注射については以前にも多くの研究があります。中には効果ありとした報告もあります。対象者の選びかたや効果を比較する時期などによっても効果が違う可能性は考えられます。ここでは2年間の治療が試されていますが、2年間の関節破壊の進行を抑えられなかったとしても、短期的に痛みを抑える効果がもしあるなら、無駄な治療とは言えないかもしれません。

当てはまる状況をよく選んでこうした結果を参照することにより、目的に合わせて治療を選ぶための根拠とすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of Intra-articular Triamcinolone vs Saline on Knee Cartilage Volume and Pain in Patients With Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2017 May 16.

[PMID: 28510679]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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