MALTリンパ腫に対するクロラムブシル+リツキシマブの長期効果
MALTリンパ腫をクロラムブシルとリツキシマブで治療したのち長期間追跡した結果が、専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告されました。
※クロラムブシルは日本では未承認です。
この研究は、治療に使う薬を3種類比較しています。
- クロラムブシルのみ
- リツキシマブのみ
- クロラムブシル+リツキシマブ
すでに短期間の解析により、クロラムブシルとリツキシマブの両方を使うことで、クロラムブシルのみの治療よりも無イベント生存率(がんの再燃がなく生存している人の割合)が改善したという結果が出ていました。ここでは、参加者の半数が7.4年以上追跡された時点で改めてデータを解析し、長期的な効果を比較しています。
併用で無イベント生存率は改善したが全生存率は同様
次の結果が得られました。
5年時点での無イベント生存率はクロラムブシル単独で51%(95%信頼区間42-60)、リツキシマブ単独で50%(95%信頼区間42-59)、併用療法で68%(95%信頼区間60-76)だった(P=0.0009)。
どの群でも5年全生存率はおよそ90%だった。
予期しない毒性は記録されなかった。
クロラムブシルとリツキシマブを併用したグループで、無イベント生存率が68%と最も高くなりました。しかし、生存だけに着目すると、どの治療でも5年後に生存していた人が90%前後でした。長期追跡によって未知の副作用は発見されませんでした。
研究班は「リツキシマブとクロラムブシルの併用療法は、MALTリンパ腫に対してより優れた有効性を示した。ただし、無イベント生存率および無増悪生存率の改善は全生存率を延ばすには至らなかった」と結論しています。
長期の効果を確認
MALTリンパ腫に対するクロラムブシル+リツキシマブの治療効果が長期追跡後にも確認されたという報告を紹介しました。7年ほど追跡したうえでも、短期の結果と同様に、無イベント生存率が高くなっていました。
「全生存率を延ばすには至らなかった」という面もありましたが、生存期間に新たな治療が必要な再燃を減らすことができるなら、価値はあるかもしれません。
治療効果をより正確に把握するために、ある程度長期間追跡した結果を比較することは大切です。新しい治療法を試して短期的には効果に差があっても数年で差がなくなるようなら、治療法を変えることの利益は短期的なものに限られると考えることになります。特に、ここで5年全生存率が90%とされたように、MALTリンパ腫は長期生存も期待しやすいため、長期的な結果を比較することが重要になります。
新薬・新治療が現れても長期的な効果を確かめるにはそれだけの追跡期間がかかります。このように長年の時間をかけて評価を確立させることが、より合理的に治療法を選ぶための役に立てられています。
執筆者
Final Results of the IELSG-19 Randomized Trial of Mucosa-Associated Lymphoid Tissue Lymphoma: Improved Event-Free and Progression-Free Survival With Rituximab Plus Chlorambucil Versus Either Chlorambucil or Rituximab Monotherapy.
J Clin Oncol. 2017 Mar 29. [Epub ahead of print]
[PMID: 28355112]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。