2017.04.28 | ニュース

妊娠中に子宮頸がんワクチンを打っても子供に影響はない?

デンマーク7年間の統計から

from The New England journal of medicine

妊娠中に子宮頸がんワクチンを打っても子供に影響はない?の写真

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、日本では「積極的勧奨の差し控え」とされたままですが、世界各国で広く使われ、研究も進んでいます。妊娠中の注射が子供に影響していないか、統計に基づく検討結果が報告されました。

スウェーデンとデンマークの研究班が、デンマークの統計をもとにHPVワクチンの影響について調べ、結果を医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。

現在使われているHPVワクチンにはいくつかの種類があります。ここでは4価ワクチンというものが調査対象とされました。4価というのは4種類のウイルスに対応するという意味です。HPVワクチンはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぎます。HPVには数多くの種類があり、ごく一部が子宮頸がんを引き起こします。4価ワクチンはHPVのうち子宮頸がんと関連が強い4種類に対応したワクチンです。

統計データのうち、2006年10月1日から2013年11月30日の間に出産(または死産)した女性のデータが使われ、妊娠中に4価HPVワクチンを接種していたかどうかと、流産や早産などとの関連が統計的に解析されました。

 

4価ワクチンを接種していたかどうかで分けると、悪い結果が発生した数は表のようになりました。

ワクチン接種 あり なし
主要な先天異常 65/1,665(3.9%) 220/6,660(3.3%)
自然流産 20/463(4.3%) 131/1,852(7.1%)
早産 116/1,774(6.5%) 407/7,096(5.7%)
低出生体重 76/1,768(4.3%) 277/7,072(3.9%)
妊娠週数に対して小さい 171/1,768(9.7%) 783/7,072(11.1%)
死産 2/501(0.4%) 4/2,004(0.2%)

 

それぞれの分子は悪い結果があった人数、分母は同様の条件に当てはまる人の数を示します。

いずれも統計的に偶然と考えて説明がつかないほどの差がありませんでした

 

妊娠中に4価HPVワクチンを打っても子供への影響は統計的に確かめられなかったという報告を紹介しました。

妊娠中はある種のワクチン(生ワクチン)を打つのに適していないと考えられています。反対に積極的に打つべきワクチンもあります。たとえばインフルエンザワクチンは妊娠中の女性が優先的に打つことが勧められています。

上に紹介した研究では、4価HPVワクチンを妊娠中に避けるべき理由は見つかりませんでした。

HPVワクチンは世界各国で子宮頸がん予防を目的に使われています。現在の日本でも、HPVワクチンの接種を行っている施設はあります。万一重い副作用が出てしまったときは医薬品副作用被害救済制度の対象になることがあります。HPVワクチンに関心のある方は効果や副作用について担当医の説明をよく聞いて利用してください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Quadrivalent HPV Vaccination and the Risk of Adverse Pregnancy Outcomes.

N Engl J Med. 2017 Mar 30.

[PMID: 28355499]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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