2015.06.15 | ニュース

子宮頚がんのワクチン、注射は3回も打たなくてよい?

HPV-16/18ワクチンの予防率を検証
from The Lancet. Oncology
子宮頚がんのワクチン、注射は3回も打たなくてよい?の写真
(C) Кирилл Рыжов - Fotolia.com

子宮頚がんを予防するために、原因のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンが使われます。十分な予防効果を出すためには3回の注射が必要と言われていますが、注射の回数を減らしても効果があるという説もあります。これまでにHPVワクチンの効果を調べた研究のデータを改めて解析し、注射の回数による違いを検証した研究から、1回の注射でも3回の注射と同程度の効果が見られたことが報告されました。

◆HPVワクチンについて

HPVにはいくつかの種類があり、それぞれ性質が少しずつ違います。HPVの種類に対応して、ワクチンにも種類があります。この研究で調べたワクチンは「16型」と「18型」という2種類のHPVの感染を予防するもので、ほかの種類のHPVに対してもいくらかの予防効果があると考えられています。

 

◆2件の研究データから改めて解析

研究班は、過去に行われた2件の研究のデータを統合して解析しました。ここで参照された研究は、それぞれ若い女性を対象としてHPVワクチンを接種し、効果を確かめたものです。得られたデータの中には、注射の回数が3回だった人、2回だった人、1回だった人の情報が含まれていました。研究班は注射の回数ごとに結果を比較して、4年後までに1回でもHPV16型または18型の感染が見つかる頻度に違いがあるかを調べました。

 

◆1回の注射で85.7%予防

解析から以下の結果が得られました。

HPV-16/18の感染発生に対するワクチンの効果は、3回の注射によって予防率77.0%(95%信頼区間74.7-79.1)、2回の注射によって76.0%(62.0-85.3)、1回の注射によって85.7%(70.7-93.7)だった。

HPV-16/18の感染発生に対するワクチンの効果は、2回の注射を受けた女性のうちで、1回目の注射から1か月後に2回目の注射を受けた人では予防率75.3%(54.2-87.5)、6か月後に2回目の注射を受けた人では82.6%(42.3-96.1)だった(CVTのデータだけを参照)。

ワクチンによってHPVの感染を減らした予防率は、1回の注射で85.7%、2回の注射で76.0%、3回の注射で77.0%となり、統計的には違いが認められませんでした。2回の注射を受けた人のうちで、1回目の注射と2回目の注射の間隔が1か月だった人では予防率が75.3%、6か月だった人では82.6%でした。

研究班は「これらのデータはHPV-16/18ワクチン1回接種の有効性を直接検証することを支持する根拠となる」と述べています。

 

注射が少ない回数で、特に1回で効果を出すことができれば、予防接種を受ける人の負担を減らすことにつながります。国や地域によって、ワクチンが使える施設にアクセスしにくい場合などには特に、この点が重要になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Efficacy of fewer than three doses of an HPV-16/18 AS04-adjuvanted vaccine: combined analysis of data from the Costa Rica Vaccine and PATRICIA trials.

Lancet Oncol. 2015 Jun 9 [Epub ahead of print]

[PMID: 26071347 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。