憩室炎に対する抗菌薬なしの治療の研究
オランダの研究班が、憩室炎に対して抗菌薬(抗生物質、抗生剤)を使わないで治療した研究の結果を専門誌『British Journal of Surgery』に報告しました。
この研究は次のような人を対象としました。
- CT検査で急性憩室炎と診断された
- 憩室炎を引き起こすような病気が背景に存在しない
- 憩室炎による穿孔(腸に穴が開く)などの重大な問題に進んでいない
- 憩室炎は左半結腸(大腸のうち肛門に近い側の半分ほど)に起こっている
対象者528人は、抗菌薬を使って治療するか、抗菌薬なしで治療するかをランダムに分けられました。
治療後6か月まで経過が追跡され、回復にかかった日数の長さを比較されました。
抗菌薬なしでも回復は遅れない
次の結果が得られました。
回復までの期間の中央値は観察群で14日(四分位間範囲6-35)、抗菌薬群で12日(7-30)であり、回復のハザード比は0.91(片側95%信頼区間の下限は0.78、P=0.151)だった。
入院期間は観察群で有意に短かった(2日 vs 3日、P=0.006)。
抗菌薬なしで治療したグループの半数は14日以内に回復しました。抗菌薬で治療したグループでは半数が12日以内に回復しました。統計的に違いがあるとは言えませんでした。また、入院期間は抗菌薬なしのグループのほうが短くなっていました。
抗菌薬の使いどきは難しい
憩室炎を抗菌薬なしで治療しても回復が遅くならなかったというデータが示されました。
抗菌薬は多くの細菌感染症に有効で、現代の医療には欠かせない薬です。しかし、感染があっても抗菌薬なしで自然に治る場合もあります。
すべての薬と同じように、抗菌薬にも副作用があります。また、抗菌薬を使うことで、抗菌薬が効かない耐性菌を生み出す恐れもあります。どんな場面で抗菌薬を使うべきかは慎重に考える必要があります。
軽症の憩室炎であれば抗菌薬を使用しない選択も考えられるかもしれません。
執筆者
Randomized clinical trial of observational versus antibiotic treatment for a first episode of CT-proven uncomplicated acute diverticulitis.
Br J Surg. 2016 Sep 30. [Epub ahead of print]
[PMID: 27686365]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。