かゆみを軽くする方法の研究
2016年のイグ・ノーベル医学賞は、ドイツのクリストフ・ヘルムヒェン氏ほかに贈られました。ヘルムヒェン氏のチームは、2013年に『PLoS One』でかゆみの研究の結果を報告しています。
かゆくない場所を掻いてもかゆみが治まるか?
研究チームは、対象者に人工的にかゆみを起こし、右腕がかゆいときに右腕を掻いたときと左腕を掻いたとき、また鏡や映像を通して見たときにかゆみが軽くなる効果があるかを調べました。
第1の実験では、鏡を右腕と左腕の間に置いて左腕を写し、実際にはかゆくない左腕を掻いているところ、対象者には鏡を通して右腕を掻いているように見えるようにしました。
第2の実験では、対象者の腕をビデオカメラで撮影し、腕がカメラの映像で見えるようにしました。映像の反転を利用することで、対象者に見える映像を次のように変えたときの違いを調べました。
- 両腕を掻いている映像が見える
- 片腕を掻いている映像が見える
- 掻いていない腕の映像が見える
かゆい場所を掻いているように見えるとかゆくなくなる
どちらの実験でも、かゆくない左腕を掻いていた参加者は、かゆい右腕を掻いているように見えるようにしたときに、かゆみが軽くなると感じました。
報告ではこの結果に対する考察として、脳の活動がかゆみに関係していることを挙げたうえ、「持続するかゆみがある局所的な皮膚の病気において、『ミラー・スクラッチング』は症状のある皮膚にさらなる害を及ぼすことなくかゆみの感覚を和らげるための代替療法となるかもしれず、したがって臨床的に有意義なインパクトがあるかもしれない」と述べています。
まとめ
夏の間に蚊に刺された人も多いでしょう。かゆい場所を掻くと、皮膚が傷付くなどして、さらにかゆみが強くなってしまいます。意外にこの研究が役に立つ場面もあるのかもしれません。
科学の進歩は自由な想像力に支えられています。イグ・ノーベル賞が取り上げるように、科学研究の中には一見変わった発想のものもあります。大きな成果を挙げた研究だけではなく、ときには変わった研究も行われていることによって、研究者の想像力が養われているのかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。