急性中耳炎予防にキシリトールを使う研究のこれまでを調査
急性中耳炎は子どもにはよく起こります。何度も繰り返す子もいます。原因として多いのが、喉から入った細菌です。キシリトールは細菌が喉の細胞に接着することを防ぎます。このことから、キシリトールが急性中耳炎に何らかの効果を与えることが予想できます。実際に多くの研究が行われています。
ここで紹介する研究は、文献を収集する方法で、キシリトールが急性中耳炎を予防する効果を調べています。
文献データベースから、最新で2016年1月までの範囲が参照され、関係する研究報告が集められました。12歳以下の子どもを対象にした研究を選びました。
キシリトールで急性中耳炎が22%に
5件の研究が見つかりました。結果のデータをまとめると、3,405人の子どもについての情報が得られました。
統計解析によって次の結果が得られました。
[...]キシリトールは(すべての形態の合計で)対照群と比べて、急性中耳炎のリスクを30%から22%に減らすことができる(リスク比0.75、95%信頼区間0.65-0.88)。離脱の理由のうちで、腹部不快感と皮疹の頻度は、キシリトール群と対照群で有意差がなかった。
キシリトールを使わなかったグループでは、30%の子どもに急性中耳炎が起こっていました。対してキシリトールを使ったグループでは22%の子どもに急性中耳炎が起こりました。したがって、キシリトールは急性中耳炎の頻度を75%ほどに減らす効果があると見られました。
ただし、急性中耳炎を繰り返している子どもに対しては再発を防ぐ効果は確かめられませんでした。
キシリトールの副作用として一般にお腹の張りや下痢が知られていますが、腹部不快感によって研究から離脱した子どもの数は、キシリトールを使ったグループと使わなかったグループで差がありませんでした。
解釈
キシリトールは口の衛生を通じてほかの効果があるのかもしれません。
ただし、急性中耳炎を繰り返している子どもに効果が見られなかった点は注意が必要です。「何度も急性中耳炎になったからキシリトールで予防しよう」という考えは成り立たないということです。
特に心配な点のない子どもが、お腹の調子にも気を付けながら使えば何かのプラスにはなるかもしれません。
執筆者
Xylitol for preventing acute otitis media in children up to 12 years of age.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Aug 3.
[PMID: 27486835]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。