痛くて歩けない症状にチベットの薬草は効くか?
少し歩くと足が痛くなって立ち止まってしまう「間欠性跛行」という症状があります。治療の一つとしてチベット由来の薬草である「パドマ28」が海外では知られていますが、効果はあるのでしょうか。
◆パドマ28で歩けるようになるのか?
パドマ28は、手術などの標準的な治療を補う代替療法として海外で知られています。使い道としては、
ここで紹介する研究は、これまでにパドマ28が間欠性跛行を治療する効果についてどのような研究が行われてきたかをまとめたものです。
研究班は、2015年までの情報を含む最新のデータベースを探し、関係する研究報告を集めました。
◆歩ける距離が長くなっているようでも…
見つかった研究データから次の結果が得られました。
計5件の、合わせて365人が参加した試験がこのレビューに採用された。
2件の研究(参加者計193人)から統合した、パドマ28群と偽薬群における治療後の最大歩行距離についてのデータから、偽薬群よりもパドマ28群で最大歩行距離がより大きいと示された(平均差95.97m、95%信頼区間79.07mから112.88m、P<0.00001,非常に低い質のエビデンス)。
5件の研究が見つかりましたが、研究結果には治療効果以外の要素も入り込んでいる可能性があると見られました。そのうえで、パドマ28を飲んだ人は、有効成分の入っていない偽薬を飲んだ人よりも、平均して長い距離を歩けるようになったというデータが示されていました。
副作用については次の結果でした。
軽度の副作用、特に胃腸の不快感、疲労感、
発疹 が報告されていたが、この帰結はパドマ28群と偽薬群で差がなかった(オッズ比1.09、95%信頼区間0.42-2.83、4件の研究、参加者計231人、P=0.86、非常に低い質のエビデンス)。
パドマ28によって明らかに副作用が出るというデータは見られませんでした。
パドマ28の効果があると言えるかどうかについて、研究班はここで見つかった研究データには限界があるとし、「[...]患者は歩行距離が改善されなければ治療中止とされている」という点を指摘しています。
治療をして改善がなければ中止とした場合、治療を続ける人には改善があった人だけが残ることになり、治療効果を過大評価することにつながります。データの見た目のうえでは、パドマ28を飲んだ人で歩ける距離が長くなったようでも、実は見た目ほどには効いていないことも考えられます。
研究データは貴重な情報ですが、このように批判的に吟味することで、違った側面が見えてくることもあります。パドマ28のような例がほかにないか、振り返ってみるきっかけにしてもいいかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。