2016.03.30 | ニュース

胃がんになると、未婚の人のほうが死亡率が高い?

16,910人のデータから

from Oncotarget

胃がんになると、未婚の人のほうが死亡率が高い?の写真

結婚しているかどうかは、妊娠・出産はもちろん、生活習慣や環境の違いを通じて、さまざまな病気と関係します。胃がんを診断された人の間で、未婚・既婚による違いがデータの解析により検討されました。

◆結婚で胃がんの結果に違いはあるか?

この研究は、アメリカの大規模ながん研究のデータベースを参照して、胃がんと診断された16,910人のデータを解析する方法で行われました。

既婚の人(58%)と未婚の人(42%)を比較して、生存率などに違いがあるかが検討されました。

 

◆既婚の人のほうが生存率が高い

次の結果が得られました。

既婚の患者は、未婚の患者に比べて5年全生存率がより良好であり(32.09% VS 24.61%、P<0.001)、5年がん死因生存率も良好だった(37.74% VS 32.79%、P<0.001)。

胃がんが見つかった対象者のうちで、死因が胃がんかどうかを問わず、全体としての生存率を比較すると、既婚の人では5年生存率が32%、未婚の人では25%と、既婚のほうが生存率が高くなっていました

この理由についても検討され、次の結果が得られました。

第一に、既婚の患者が診断時により早期にあったということはなかった(P=0.159)。第二に、既婚の患者は未婚の患者に比べて手術を受けることが多く(P<0.001)、放射線治療を受けることも多かった(P<0.001)。第三に、サブグループ解析において、ステージIIからIVで放射線治療が行われなかったサブグループにおいても、既婚の患者は依然生存率で勝っていた。

既婚の人のほうが胃がんを早期発見されていたというデータは見られませんでした。既婚の人のほうが手術を受けること、放射線治療を受けることが多くなっていました。

これらの結果から、研究班は「未婚の患者において、治療が不足していることと、社会的サポートが欠けていることが、このことを説明できる可能性がある」と推定しています。

 

アメリカの社会に、もし未婚の人が治療を受けにくい状況があるなら、未婚の人の生存のために改善が求められます。何がこの統計的関連のもとになっていたのか、日本にも当てはまる要素があるのかどうか、いろいろな点が気になる結果です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

The influence of marital status on the stage at diagnosis, treatment, and survival of adult patients with gastric cancer: a population-based study.

Oncotarget. 2016 Feb 15. [Epub ahead of print]

[PMID: 26894860]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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