2016.03.06 | ニュース

1型糖尿病の人には、ほかの人より多いがんと少ないがんがある

5か国の統計から

from Diabetologia

1型糖尿病の人には、ほかの人より多いがんと少ないがんがあるの写真

がんにはいろいろな種類があり、できる場所などによって原因も違います。ほかの病気があるとできやすいがんも知られています。1型糖尿病の人で、がんの種類ごとに頻度の違いがあったことが報告されました。

◆5か国の登録データを解析

この研究は、オーストラリア、デンマーク、フィンランド、スコットランド、スウェーデンの登録データベースから、1型糖尿病患者とがん患者のデータを集めることで行われました。

全人口と比較して、1型糖尿病がある人で特定の種類のがんが発生する頻度に違いがあるか、統計解析により検討されました。

 

◆女性では全体で7%増

次の結果が得られました。

1型糖尿病と関連するハザード比は、すべてのがんの複合に対して男性で1.01(95%信頼区間0.89-1.04)、女性で1.07(1.04-1.10)だった。ハザード比は胃がん(男性で1.23、1.04-1.46、女性で1.78、1.49-2.13)、肝臓がん(男性で2.00、1.67-2.40、女性で1.55、1.14-2.10)、膵臓がん(男性で1.53、1.30-1.79、女性で1.25、1.02-1.53)、子宮体がん(1.42、1.27-1.58)、腎臓がん(男性で1.30、1.12-1.49、女性で1.47、1.23-1.77)に対して大きくなった。前立腺がん(0.56、0.51-0.61)、乳がん(0.90、0.85-0.94)に対してはハザード比の減少が見られた。ハザード比は糖尿病の持続期間が長くなるとともに減少した。

1型糖尿病がある女性では、がん全体の合計で、発生率が7%高くなっていました。がんの種類ごとに見ると、1型糖尿病がある人では胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がんが男女とも多く、子宮体がんも多く発生していました。前立腺がんと乳がんは、全人口に比べて少なくなっていました。

 

この研究の方法では、1型糖尿病以外の原因によりがんの頻度が違って見えていた可能性が否定できないため、1型糖尿病が直接がんの原因になるかどうかは特定できません。しかし、ここで見られた関係は、1型糖尿病と診断されたときに将来の危険性を予測するための参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Cancer incidence in persons with type 1 diabetes: a five-country study of 9,000 cancers in type 1 diabetic individuals.

Diabetologia. 2016 Feb 29. [Epub ahead of print]

[PMID: 26924393]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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