◆これまでの研究を統合
ここでは、2016年2月に発表された、カナダ予防ヘルスケアタスクフォースによるガイドラインを紹介します。
ガイドラインの中では、50歳以上の人で、大腸がんの危険性が特に高いと見られる場合(以前に大腸がんや大腸ポリープが見つかったことがあるなど)を除き、どんな場合にどの検査を受けるかが勧められています。
このガイドライン作成のため、これまでに報告されていた研究結果が集められ、内容を吟味したうえデータを統合して検討が行われました。
◆便潜血でも、S状結腸鏡でも74歳まで
集まった文献の内容をもとに、次の4か条が推奨とされました。
60歳から74歳の成人には、便潜血検査(グアヤック法または免疫学的方法による)を2年ごとに、または軟性S状結腸鏡を10年ごとに使う直腸結腸がんのスクリーニングを勧める。(強い推奨、中等度の質のエビデンス)
50歳から59歳の成人には、便潜血検査(グアヤック法または免疫学的方法による)を2年ごとに、または軟性S状結腸鏡を10年ごとに使う直腸結腸がんのスクリーニングを勧める。(弱い推奨、中等度の質のエビデンス)
75歳以上の成人には、直腸結腸がんのスクリーニングを行わないことを勧める。(弱い推奨、低い質のエビデンス)
直腸結腸がんのスクリーニング検査には、全結腸内視鏡を使わないことを勧める。(弱い推奨、低い質のエビデンス)
これらは集まった文献のデータをもとにしています。
統合して解析した結果、便潜血検査を受けることで、大腸がんによる死亡が少なくなると見られ、74歳までの人で推奨とされました。
同様に内視鏡の一種で、大腸のうち肛門に近い一部分だけを観察するS状結腸鏡を使った検査でも、大腸がんによる死亡を防げると見られ、74歳までの人で推奨とされました。その一方、内視鏡により腸に穴が開く、出血する、死亡するといった例がごくまれに見られました。
内視鏡の中でもより広い範囲を観察する全結腸内視鏡については、専門家が必要であること、S状結腸鏡よりも優れていることを直接示した事例がないことなどが指摘され、非推奨とされました。
このガイドラインはカナダの状況を前提にしているため、年齢別の人口や大腸がんの頻度などによって、日本にもすべてが当てはまるとは限りません。しかし、多くの研究データをもとにまとめた結果として、検査の特徴を知る参考にはなるかもしれません。
執筆者
Recommendations on screening for colorectal cancer in primary care.
CMAJ. 2016 Feb 22. [Epub ahead of print]
[PMID: 26903355]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。