2016.02.25 | コラム

変形性膝関節症の手術(人工膝関節全置換術、TKA)の後、どんなリハビリをすれば良いの?

術後リハビリの意義と効果について

変形性膝関節症の手術(人工膝関節全置換術、TKA)の後、どんなリハビリをすれば良いの?の写真
1. 変形性膝関節症の手術とリハビリの目的とは?
2. 変形性膝関節症の手術後のリハビリとは?

変形性膝関節症は、膝の痛みなどの症状によって日常生活の障害となります。痛みを軽減する治療法のひとつが手術です。手術後にはリハビリが必要となります。このページでは、変形性膝関節症の手術とリハビリについて解説します。

◆変形性膝関節症の手術とリハビリの目的とは?

変形性膝関節症は、膝の痛みにより日常生活の動作が上手くできなくなる病気です。膝の痛みが起こる原因は、加齢などによって膝の内側の軟骨がすり減ることです。膝の変化は年とともに進行していき、関節の変形を起こします。

治療として、運動療法などに痛みを軽くする効果があるほか、痛み止めの薬(消炎鎮痛薬)を使う方法もあります。重症の場合などで手術も検討されます。

変形性膝関節症の代表的な手術方法に、人工膝関節全置換術(TKA)があります。この手術は、傷ついた膝関節を人工関節に入れ替えることで、痛みを改善します。

この手術では、骨を一定の角度で切り、骨に穴を開け、そこに人工関節を挿入します。細かい方法には状況に応じていろいろな違いがあります。

手術にともなって膝や股関節の筋肉を鍛える、動作の方法を習得するといった術前後のリハビリテーションが必要になります。手術の前からリハビリテーションを行うことで、術後の機能改善が助けられます。術後にもリハビリテーションが行われます。

手術により痛みが改善したうえで(もちろん、手術後の傷の痛みはあります)、日常生活を上手く送れるようになるためには、リハビリテーションは非常に重要です。

 

◆変形性膝関節症の手術後のリハビリとは?

変形性膝関節症の手術後、その人の状態によっても異なりますが、手術した方の足に全体重を掛けてよくなるのは、早ければ手術の翌日です。手術をした膝は、傷口、膝の腫れ、それまで膝が曲がっていたものを急に真っ直ぐに戻すことで起きる筋肉の張りなどにより痛みが生じます。足に体重をかけると痛いため、なかには足に体重をかけることが許可されても、痛みのために車椅子を使用する人もいます。これらの痛みの多くは、徐々に改善されていくものですが、術前に続いて、術後も早期からしっかりリハビリテーションを行うことで、歩くときや日常生活の動作を行うときの膝の痛みを軽減することもできます。

それでは、変形性膝関節症の手術を行った後、どのようなリハビリテーションを行えば良いのでしょうか。

 

変形性膝関節症では、手術前から膝関節の筋力が低下したり、膝の関節可動域(関節が曲がる程度)に制限があったり、痛みにより動作の方法(例えば、椅子からの立ち座り、階段の上り下り)などが障害されています。これらの状態は、手術してすぐに良くなるわけではなく、それぞれリハビリテーションを行うことで改善することになります。一般的にどのようなリハビリテーションが行われているか解説します。

 

参考:理学療法診療ガイドライン

 

アイシング

手術後すぐには、膝に熱い感じがあったり、「じーんと痛い」と感じたりすることがあります。リハビリテーションでは、アイシングといって、膝を冷やすことがあります。リハビリテーションの時間だけではなく、ベッドの上にいる時間でご自身で行うことも可能です。

 

関節可動域練習

関節に外から力を加えて(他動的に)動かし、関節の曲がる程度を徐々に増やしていく方法があります。これは、リハビリテーションの専門家である理学療法士や作業療法士がついて行うほか、自分で痛みと相談しながら膝を曲げていく練習を行う場合もあります。

ベッドの上では、CPM(持続的他動運動)装置という機械で他動的に膝を動かすこともあります。この機械は、膝に取り付け、曲げる角度と時間を設定すると、膝を曲げてくれるものです。理学療法士や作業療法士ではなくとも、看護師などが装着できるため、リハビリテーションの時間外で行えるというメリットもあります。効果の是非に関しては様々な意見がありますが、無理のない範囲から徐々に膝の角度を増やしていくことができます。

 

筋力増強練習

変形性膝関節症では、手術前から膝や股関節の筋力が低下しています。膝の痛みにより活動量が少なくなり、さらに筋力が低下するという悪循環があるため、どこかでその悪循環を取り除かなければいけません。全身の活動量が低下している場合、さらに変形性膝関節症に関わる要因のひとつである肥満がある場合は筋力増強の意義があります。特に腹筋が弱いと、ベッドからまっすぐ起きられない、何かにつかまらなければ起き上がれないということにもなります。また、腹筋を含む体幹の筋力が低下していると、歩く動作や階段の上り下りの動作で膝に負担がかかります。そこで膝や股関節の筋力を鍛えるほか、お腹周りの筋肉を鍛える練習もあります。

どの筋肉をどのように鍛えれば良いかは、リハビリテーションの専門家の指導を受けることをおすすめします。

 

物理療法

物理療法は、ホットパック(温めることで痛みを緩和する治療法)や超音波治療器(超音波を使って体の深層に熱を届かせる)といった「物理的な力を用いた治療法」で改善を図るものです。施設によってはその機械がないこともあります。炎症が落ち着いていない時に温めると、かえって逆効果になることがあるため、医師や専門家の判断によって安全を図ります。

 

日常生活動作練習

日常生活を送る上で必要な動作の練習を行います。手術前は膝が痛いため、歩くことや階段の上り下りが難しい、低い椅子から立ち上がれないという場合があります。手術後には手術前に制限されていた動作の改善を目指します。筋力を鍛え、動作練習を行うことで改善を目指します。その他、洗濯や物干し、入浴動作といった膝に負担がかかる可能性がある動作は、リハビリテーションによってそれぞれの動作を確認しながら、練習していくことが必要です。

 

手術後のリハビリを行うにあたっての注意

この他、もし自宅で日常生活を上手く送れない場合では、住宅改修を行ったり、床の生活が難しい場合では椅子の生活に変えたりと、生活状況を変えることが解決になることもあります。

また、退院してからもリハビリを継続することも大事です。すぐにリハビリテーションをやめてしまうと、筋力などは簡単に元に戻ってしまいます。

変形性膝関節症で手術を受けただけで生活の妨げが解消されるのではなく、変形した膝に慣れてしまった動作のクセや方法を変えることも改善のための大切な要素であり、それがリハビリテーションの意義のひとつです。

 

注:この記事は2016年2月25日に公開されましたが、2018年2月13日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

Shuhei Fujimoto

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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