2026.01.20 | コラム

ステロイド外用剤、どのくらい塗ればいいの??

ステロイド外用剤の適正使用〔その③〕
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ステロイド外用剤(塗布薬)はその有用性などにより、アトピー性皮膚炎をはじめとして多くの皮膚疾患で使用されている薬剤です。適切に使うことで有益な効果が期待できる一方、不適切に使うと不利益をもたらす可能性もあります。今回はステロイド外用剤の塗る量はどのくらいが「至適量」なのかをみていきます。

◆基本は「約0.5g」?

ステロイド外用剤の1回の使用量を考える際、一般的には「約0.5g」という量が指標となり、この「約0.5g」は「大人の手の面積の約2枚分」が塗れる量とされています。仮に、皮膚炎などの範囲が大人の手の1枚分くらいである場合は「約0.25g」のステロイド外用剤が必要となるわけです。

なぜ「約0.5gで大人の手の約2枚分」かというと、ステロイド外用剤を全身に使用するとした場合の至適量(20-25gとされています)から、大人の手の2枚分の面積が体表面積の約2%であることを考え、算出された量となっています(もちろん「大人の手」といっても大きさに個人差はありますが、その点なども含めての「0.5g」となっています)。

◆適量をはかりとるには「人差し指」を使うとよい?

さて、「約0.5g」が指標となる量というわけですが、実際に「約0.5g」がどのくらいの量と言われるとイメージがつきにくいかもしれませんし、使用する度に機械を使って計量するというのもあまり現実的ではありません。

そこで一般的に使われるのが、FTUFinger Tip Unit)という指(人差し指)を利用した目安です。軟膏剤(またはクリーム剤)であれば、全量が25gで中身が出てくる出口の口径が5mm程度のチューブから薬剤を出した場合のその長さにおいて、「大人の人差し指の先端から第一関節までの長さ分(くらい)を出した量」が「約0.5g」とされ「1FTU」として実際に塗る際の指標として用いられています。なお、後述する理由などを加味して、「先端から第一関節+半分(第一関節と第二関節の中間まで)・・・」と紹介されている場合もあります。ちなみに、ローション剤などの液剤は「1円玉くらいの大きさ」分、薬剤を手のひらなどにとると「約0.5g」となります。

ステロイド塗り薬の適量がわかるFTU(Finger Tip Unit)とは?

なお、過去の臨床研究では、全身に使用した場合に十分な効果が得られるステロイド外用剤の量が13g程度と先ほどの全身量(20-25g)に比べ少なく報告されているものもあります。この場合、全身に使う量から大人の手の2枚分の面積に塗布する至適量を算出すると「約0.25g」となり「0.5FTU」となります。これに加え、指の長さなどの個人差もFTUの量にばらつきを与える要因にはなりますが、少なくとも大人の手の2枚分の面積に塗る至適量としてはおおよそ0.5FTU(約0.25g)から1FTU(約0.5g)と考えてよいとされています。

FTUの量にばらつきを与える要因はほかにもあります。外用剤のチューブ(容器)にはいくつかの規格(大きさ)があり、通常、チューブの規格ごとに口径も異なります。1FTUが「約0.5g」となるのはあくまでも全量25gで口径が5mm程度のチューブから絞り出した場合の想定量です。日本で使われることが多い5gや10gのチューブから出した量とはやや差が生じるため、こちらもFTUによる量が異なってくる要因になっています。実際に5gや10gチューブから1FTUを絞り出した量はおおよそ0.2-0.3gとなり「約0.5g」よりは少なめです(この差を考えると前述の「先端から第一関節+半分・・・」と紹介されるケースがあることも理解できます)。ただし、先ほど紹介したように、大人の手の2枚分の面積に塗る至適量はおおよそ0.5FTUから1FTUと、ある程度幅をもたせて考えられているため、5gや10gのチューブでもFTUを目安にして問題ないとされています。

ちなみに、ステロイド外用剤ではありませんが、5gや10gチューブであっても「1FTU」の量が「約0.5g」になるようにチューブの口径が設計されている製剤(製剤例:コレクチム®軟膏)もあります。

◆”不適切”に使った場合の不利益とは?

ところで、ステロイド外用剤を”適正ではない量”、使用した場合にはどのような不利益が生じるのでしょうか。当然、過剰な量を塗ってしまった場合には副作用などの問題が生じやすくなるということは比較的、イメージしやすいかもしれませんが、逆に、至適量に対してあまりにも少ない量を塗ってしまった場合にも治療効果が十分に得られない、つまり皮膚炎などの病態が改善しないといった問題が生じてしまいます。

1990年代、アトピー性皮膚炎に対してステロイド外用剤を使用する治療は誤りである・・・という風潮が一時あり、これによってステロイド外用剤が適切に使用されなく、その結果、皮膚炎の症状を悪化させてしまうということがありました。また、ステロイド外用剤を使用していると皮膚の色が黒くなるなどといった誤解も時々、見受けられます(治療により皮膚の炎症がとれると赤みがとれ黒くみえることがありますが、これはステロイド自体の作用というわけではなく、むしろ、ステロイド外用剤を継続的に使用しているとメラニンという黒色色素の産生が抑えられるため、肌の色は部分的に白っぽくなります)。

近年では、ステロイド外用剤に関しての正しい理解がかなり進み、誤解などはかなり解消されてきてはいますが、一部ではまだ誤った認識で捉えられていることもあります。そのため、ステロイド外用剤を使用することへの恐怖心などといったマイナスなイメージが助長され、実際に使用する際に、本来、必要である量よりもかなり少なめに使用してしまい、効果が十分に得られないといったケースもないわけではありません。これらを考慮して一部の医療機関では、診察時や薬剤交付時などにあえて「たっぷり塗って下さいね」などと説明することもあります(もちろん、ここでの「たっぷり」とは、過剰な・・・という意味ではなく、あくまで治療に対して十分な量を・・・という意味を込めてです)。

また、いくら少な過ぎるのがダメといっても、逆に過剰になってしまってもそれはそれで問題です。至適量を極端に上回るような量(例えば、通常、0.5gで十分な範囲に10gを超える量を塗るなど)を使用した場合には、当然、副作用が引き起こされやすくなります。外用剤特有の局所性の副作用(ステロイド外用剤の副作用に関してはこちらのコラム「ステロイド外用剤の“副作用”って??」を参照ください)はもちろん、仮に局所性の副作用を引き起こす量を大きく上回る多量かつ広範囲に長期間使用した場合には、全身性の副作用(例えば、中心性肥満、満月様顔貌、高血圧など)が生じる可能性が高くなります。ただし、通常の使用量、それこそFTUなどを参考にした量で適切に使用していれば、全身性の副作用は極めて起こりづらいとされているため、治療効果のみならず副作用防止の観点においても至適量を理解しておくことがいかに重要かがわかります。

 

今回紹介したのは、ステロイド外用剤の「量(至適量)」が主ですが、ステロイド外用剤は「量」だけでなく、その「強さ」(ステロイド外用剤の強さに関してはこちらのコラム「ステロイド外用剤の“強さ”って??」を参照ください)や使用する「期間」なども重要になってきます。ステロイド外用剤をより適切に、かつ、より安全に使用するためには、一般的な「至適量」を理解した上で、事前に医師や薬剤師から詳しい使用方法や使用上の注意などをしっかりと聞いておくことがとても大切です。

執筆者

中澤 巧

参考文献

1:C.C. Long, A.Y. Finlay, The finger-tip unit - a new practical measure, Clin. Exp. Dermatol., 16, 444-447(1991)
2:C.C. Long, C.M. Mills, A. Y. Finlay, A practical guide to topical therapy in children, Br. J. Dermatol., 138, 293-296(1998)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。