2015.12.23 | ニュース

息が切れて歩けなくなる「肺高血圧」を治療、アンブリセンタンとタダラフィル併用の効果

500人の治療により検証

from The New England journal of medicine

息が切れて歩けなくなる「肺高血圧」を治療、アンブリセンタンとタダラフィル併用の効果の写真

肺に血液を送る肺動脈の圧が高い状態(肺高血圧)は、進行すると息切れなどにより歩く能力が損なわれることがあります。さらに重症では治療のため肺移植が行われる場合もあります。2種類の薬を使った治療法の研究が行われました。

◆併用の効果を調査

この研究は、肺高血圧があり、体を動かしたときに呼吸困難や胸痛などの症状が現れる人500人を対象としました。

対象者はランダムに次の3グループに分けられ、治療を受けました。

  • アンブリセンタンだけで治療されるグループ
  • タダラフィルだけで治療されるグループ
  • アンブリセンタンとタダラフィルを両方使って治療されるグループ

アンブリセンタンとタダラフィルは、どちらも肺高血圧を治療する薬ですが、違うしくみで効くとされています。

治療後に死亡や病状の悪化が起こる頻度が比較されました。

 

◆悪化が少なく、歩ける距離が長く

次の結果が得られました。

一次エンドポイントのイベントは併用療法群で18%、アンブリセンタン単剤治療群で34%、タダラフィル単剤治療群で28%に起こり、単剤治療群の2群を合わせると31%に起こった。一次エンドポイントについて併用療法群と単剤治療群2群のハザード比は0.50(95%信頼区間0.35-0.72、P<0.001)だった。

24週時点で、併用療法群では[...]6分間歩行試験により大きな改善が見られた(ベースラインからの変化の中央値48.98m vs 23.80m、p<0.001)。

併用療法群でどちらの単剤治療群よりも多く起こった有害事象には、末梢浮腫、頭痛、鼻閉、貧血があった。

死亡や病状の悪化は、どちらか一方の薬を使ったグループよりも、アンブリセンタンとタダラフィルを併用したグループで少なくなりました。また、併用のグルーのほうが、歩く距離の改善がより大きく見られました。併用による副作用の可能性があることとして、手足のむくみや頭痛などが見られました。

 

肺高血圧は軽症では自覚症状が少なく、診断されるまでに時間がかかることがありますが、治療にはこのような薬の研究も行われています。早い段階で適切に診断されることによって、ここで得られた結果も活かせる場面があるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Initial Use of Ambrisentan plus Tadalafil in Pulmonary Arterial Hypertension.

N Engl J Med. 2015 Aug 27

[PMID: 26308684]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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