2015.11.14 | ニュース

赤ちゃんが乳酸アシドーシスで入院、授乳中に不足していた栄養素とは?

カシミール地方の23人の重症例

from Nutrition (Burbank, Los Angeles County, Calif.)

授乳中の母親の食事が偏っていると、母乳を飲んでいる子どもにも影響が現れることがあります。インドのカシミール地方で、食習慣に関係すると見られる栄養の偏りにより、乳酸アシドーシスという危険な状態に陥った23人の乳児の例が報告されました。

◆ビタミンB1不足による乳酸アシドーシス

乳酸アシドーシスは、体の中で糖質が正常に代謝されず、普通は微量にしか作られない乳酸が血液の中に大量にたまってしまうことにより、血液が酸性に傾いた状態です。重症では意識が遠くなるなどの症状があり、50%が死に至るとも言われ、非常に危険です。

この報告は、カシミール地方の施設で6か月の間に23人記録された、チアミン(ビタミンB1)不足による重症の乳酸アシドーシスが起こった乳児の例をまとめたものです。

 

◆白米が主食

この乳児たちの特徴と経過は以下のようなものでした。

生後32日から4か月までの子ども23人(11人が男の子、12人が女の子)が、入院時にpH7以下だった。

血中乳酸値は15mmol/lを超えていた。血中チアミン値が測定された乳児での範囲は11-69nmol/lだった(対照群では78-185nmol/lだった)。すべての乳児が母乳だけで栄養された。母親の主食は精白米だった。すべての母親が米を何度も研いだうえで食べていた。

最も多く見られた症状は易刺激性(82%)と逆流(56%)だった。最も多く見られた徴候は頻脈(100%)と呻吟(73%)だった。チアミンに対する応答は劇的であり、呻吟と易刺激性は2時間以内に、頻脈は4時間以内に消退した。

血液の酸性の度合いを示すpHが、この23人の子どもでは正常範囲の7.35から7.45を外れて大きく酸性に偏り、7以下でした。乳酸の量は5mmol/l以上で乳酸アシドーシスとされますが、この子どもたちでは15mmol/l以上でした。

原因として、カシミール地方では白米を研いで調理したものが主食であり、ヌカの部分に含まれるチアミンが失われることから、チアミン不足による代謝の異常が疑われました。23人の子どもは全員が母乳だけで育てられていて、母親は全員が米をよく研いで食べていました

子どもたちは不整脈などを起こし、危険な状態にありましたが、チアミンを与えられたことで劇的に改善しました。

研究班は「チアミン欠乏による代謝性アシドーシスは、受診時にpHが7未満であってさえ、早期に治療すれば即時的にも長期的にも良好な予後と関連する」と結論しています。

 

母乳にはさまざまな良い面がありますが、ビタミンKが少ないなど、補うべき面もあります。この報告は極端な例としても、授乳中は栄養の偏りには特に注意が必要です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Thiamine responsive acute life threatening metabolic acidosis in exclusively breast-fed infants.

Nutrition. 2015 Sep 2 [Epub ahead of print]

[PMID: 26515900]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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