肥満患者の自傷行為に、減量手術は関係するのか?

肥満症では、重度になると減量手術を行うことがあります。これまで、減量手術後に自傷行為の頻度が多いことが知られていました。今回の研究では、減量手術前後で自傷行為の危険性に変化が見られるか検証しました。
◆減量手術と自傷行為との関連性を検証
今回の研究は、2006年から2011年にカナダで減量手術を受けた8,815人を対象に行われました。減量手術3年前から減量手術3年後を追跡し、自傷行為との関連を検証しました。
◆減量手術のあとでは、自傷行為を行う危険性が約1.5倍
以下の結果が得られました。
全体を通して、自傷行為は、手術前と比較して(1000人年あたり2.33)、手術後に
有意 に増加し(1000人年あたり3.63)、相対リスクは1.54(95%信頼区間1.03-2.30、p=.007)であった。手術後の自傷行為は、35歳以上(相対リスク1.76、95%信頼区間1.05-2.94、p=.03)、低収入の人(相対リスク2.09、95%信頼区間1.20-3.65、p=.01)、田舎に住んでいる人(相対リスク6.49、95%信頼区間1.42-29.63、p=.02)で、手術前より高かった。
もっとも多かった自傷行為のメカニズムは、意図的な過剰服薬であった(115[72.8%])。
減量手術を行うと、手術前と比べて自傷行為を行う危険性が大きくなりました。また、理由として、過剰に薬を飲むことによるものが多いという結果でした。
自傷行為のもっとも多かった理由である過剰服薬は、薬の処方方法に注意すれば少なくすることができるかもしれません。手術と自傷行為の因果関係は不明ですが、過剰服薬への対策により自傷行為が減少する可能性も含めて、減量手術のあとで必要なケアについて、今後の検証が期待されます。
執筆者
Self-harm Emergencies After Bariatric SurgeryA Population-Based Cohort Study.
JAMA Surg. 2015 Oct 7
[PMID: 26444444] http://archsurg.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2448916&resultClick=3※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。