◆肥満と膵臓がんによる死亡の関係
研究班は、過去の研究を検索し、膵臓がんの発症前に肥満があったかと、膵臓がんによる死亡の関連について調べたものを集めました。
得られたデータを統合し、BMI(体重÷身長の2乗)が30以上の肥満、またはBMIが25から30の過体重の人が、正常の体重の人と比べて膵臓がんによる死亡率に違いがあるかを調べました。
◆欧米人にだけ関係がある?
見つかった13件の研究から、次の結果が得られました。
メタアナリシスにおいて、対照群と比べて膵臓がん関連死亡率の増加が過体重の人(調整ハザード比1.06、95%信頼区間1.02-1.11、I2=0)および肥満の人(調整ハザード比1.31、95%信頼区間1.20-1.42、I2=43%)について観察された[...]。
サブグループ解析において、肥満は欧米人の集団では死亡率の増加と関連したが(11件の研究、調整ハザード比1.32、95%信頼区間1.22-1.42)、アジア・太平洋の集団では関連がなかった(2件の研究、調整ハザード比.098、95%信頼区間0.76-1.27)。
BMI25以上の過体重の人でも、BMI30以上の肥満の人でも、膵臓がんによる死亡が多くなっていました。そのうちでも、欧米人については肥満と膵臓がんによる死亡に関連が見られましたが、アジア・太平洋の人種については統計的な関連が見られませんでした。
肥満がある人では膵臓がんによる死亡が多いという結果でしたが、人種によって違うかもしれないという結果も示されました。
人種によって社会的背景などが違っていた可能性も考えられ、人種による体質の違いが膵臓がんによる死亡と関係しているかどうかはこの結果からはわかりません。この結果から、重要な要素は何だったのか、また膵臓がんによる死亡を防ぐ方法はあるかといった観点の情報と組み合わせることで、有効な対策に結びつけられるかもしれません。
執筆者
Premorbid Obesity and Mortality in Patients With Pancreatic Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2015 Oct 9 [Epub ahead of print]
[PMID: 26460214]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。