◆アボボツリヌス毒素Aの用量を変えた2群とプラセボ群の計3群にランダムに振り分け
脳卒中または外傷性脳障害となった患者243人を、プラセボ群、アボボツリヌス毒素Aの用量を500ユニットとして注射する群、2倍の1000ユニットを注射する群の3群にランダムに分けました。
アボボツリヌス毒素Aは、肘、手首、指のうち、もっとも緊張が高い(硬い)部位に注射し、それぞれ硬さへの治療効果を検証しました。
◆アボボツリヌス毒素Aで腕や手の硬さが改善
以下の結果が得られました。
肘、手首、指のうち最も硬かった部分において、ベースラインから4週間時点のMASの平均変化量は、プラセボ群(n=79)で-0.3(標準偏差0.6)、アボボツリヌス毒素A500ユニット群(n=80、差-0.9、95%信頼区間-1.2から-0.6、p<0.0001 vs プラセボ)で-1.2(標準偏差1.0)、アボボツリヌス毒素A1000ユニット群(n=79、差-1.1、95%信頼区間-1.4から-0.8、p<0.0001vs プラセボ)で-1.4(標準偏差1.1)であった。
アボボツリヌス毒素Aを硬い部分に注射すると、その部分の硬さが改善したという結果でした。
以前に、脳卒中の患者にボツリヌス毒素を注入することで腕の機能が改善するという研究を報告しましたが、今回紹介した研究では、腕の硬さに着目して効果を検証しています。使用した薬については、アボボツリヌス毒素Aの方が安価という特徴があります。
アボボツリヌス毒素Aは日本では標準的な治療とされてはいませんが、脳卒中でよく見られる腕の硬さが改善し、それにより機能が向上するといった効果があるのだとすれば、有効な薬として将来評価が検討されるかもしれません。
執筆者
Safety and efficacy of abobotulinumtoxinA for hemiparesis in adults with upper limb spasticity after stroke or traumatic brain injury: a double-blind randomised controlled trial.
Lancet Neurol. 2015 Oct
[PMID: 26318836]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。