運動錯覚を起こすと橈骨遠位端骨折術後の痛みは改善する

手首の橈骨遠位端骨折の術後に痛みが残ることがあります。今回の研究では、そのような患者に対して運動錯覚を起こす治療を行い、痛みや関節の動きが改善することを報告しました。
◆7日間の手首の腱に対する振動刺激を実施
運動錯覚とは、自分の腕や手があたかも運動しているように錯覚することです。その状況を作ることで、脳も騙されて運動をしているような脳活動を示します。
橈骨遠位端骨折患者26名を対象に、運動錯覚群と対照群に分類し、術後7日間連続で治療を行いました。運動錯覚を用いた治療は、手首の腱への振動刺激を用いました。その後の痛みや関節可動域などへの効果を検証しています。
◆運動錯覚群で痛みが改善
調査の結果、以下のことを報告しました。
運動錯覚群は対照群と比較して、術後7日、1ヶ月、2ヶ月の時点で、安静時痛(p<0.001)、運動時痛(p<0.001)、痛みの破局化スケール(p<0.001)、Hospital Anxiety and Depression Scale(p<0.01)、関節可動域(p<0.05)が改善した。
手首への振動刺激を行うと、痛みや関節の曲がり具合、入院中の不安といった感情について、改善が見られました。
筆者らは、「運動錯覚群では、橈骨遠位端骨折患者の痛みに関する感覚と感情の側面が改善する。」と述べています。
運動錯覚によって、痛みが改善し、入院中の不安といった感情の側面にも効果があったという論文でした。近年、痛みの研究が進んでいます。今後の知見に期待したいです。
執筆者
Influence of illusory kinesthesia by vibratory tendon stimulation on acute pain after surgery for distal radius fractures: A quasi-randomized controlled study.
Clin Rehabil. 2015 Jul 21
[PMID: 26198893]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。