2015.08.22 | コラム

手術前後の禁煙はなぜ必要?

手術なら 絶対やめよう 喫煙を

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全身麻酔での手術を受けるにあたって、喫煙はとても大きなリスクとなります。なぜリスクとなるのか、タバコが体に及ぼす影響を含めて解説します。

全身麻酔の手術を受けるにあたって、医師や看護師から「タバコは吸っていますか?いつから?どのくらい?」と聞かれた経験がある方もいると思います。なぜ喫煙歴を問うかというと、これは全身麻酔においてとても重要な情報であるからです。

タバコと全身麻酔?関係ないでしょう?と思うかもしれませんが、密接な関係にあるのです。喫煙は全身麻酔や手術にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 

◆タバコに含まれる成分とその影響

タバコに含まれる多数の成分は、体に様々な影響を及ぼします。どのような影響があるのか、一部の成分について解説します。

  • 一酸化炭素:血液内のヘモグロビン(酸素と結びついて全身に運ぶ)と結びついて、酸素の運搬能力を低下させる。
  • 一酸化窒素:血管を広げる因子となり、血圧の調節が難しくなる。
  • タール:気管を狭め、呼吸の低下につながる。また、気道の絨毛(気道表面にある細かい毛のようなもので、気道の壁の粘液を移動させる)の運動を悪くして、痰がたまりやすくなる。
  • ニコチン:気道の分泌物(痰)を増やしたり、気管支を狭くする。

主に、呼吸器や血流への影響があるようです。では、これらの体への影響が全身麻酔や手術にどう関係し、それがどのように問題となるのでしょうか?

 

◆起こりうる問題

前項で挙げた影響が、具体的にどのように問題となるのか簡単に解説します。

  • 痰の量が増える:痰の量が増えると、気道を塞ぐ原因となって気管内チューブ(呼吸を助けるために気管に挿入する管)を塞ぎ、呼吸困難になってしまう。
  • 気道を狭める:気管や気管支を狭めることにより呼吸困難になってしまう。
  • 血圧コントロールが難しい:血管の拡張や収縮がスムーズでなくなり、血圧のコントロールが難しくなる。
  • 術後感染が多い:傷に十分な血流及び酸素が供給されず、傷の治りが遅くなったり感染が起きやすくなったりする。

つまり、呼吸状態を悪くしたり、血流を悪くしたりして、手術の進行の妨げとなる可能性があるのです。また、術後30日の死亡率が非喫煙者の1.31倍であったとのデータもあるくらい、術後の経過にも影響を与えます。

 

◆最低一ヶ月以上の禁煙を!

では、逆に禁煙は体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?術前に禁煙することにより、様々な合併症の発生頻度が減少します。

  • 禁煙2〜3日で呼吸機能が改善される
  • 禁煙3週間で傷の治りが早くなる
  • 禁煙4週間で呼吸器合併症(気道の狭まりや痰の貯留による呼吸不全など)が減る

禁煙の影響についてこのように言われており、最低でも一ヶ月の禁煙が推奨されています。しかし、手術まで一ヶ月を切ってから禁煙を始めた場合でも、少なくとも合併症の増加はないため、手術までの期間に関係なく禁煙するべきだと言われています。

一日でも早く、一日でも長く、禁煙はするべきなのです

もちろん術後の禁煙も非常に大切で、術後も継続して禁煙することにより順調な回復の助けとなるのです。

麻酔をかけるところから始まり術後退院した後まで、喫煙のデメリットは多くあり、禁煙して損はないことを強調しておきます。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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