◆Ad/Envワクチンをアカゲザルに接種
研究班は、アデノウイルス26型(Ad26)というウイルスと、HIVの近縁種であるSIVが持つ糖タンパク質「Env」を使ったワクチンの効果を動物実験で試しました。
アカゲザルをワクチンを接種するグループと接種しないグループに分け、アカゲザルの直腸に、ワクチンに使われたSIVとは違う型のSIVを繰り返し触れさせることで、感染が防がれるかどうかを調べました。
◆50%の感染を防止
実験の結果、ワクチンを接種しなかったアカゲザルはすべてがSIVに感染しましたが、ワクチンを接種したアカゲザルの50%は感染しませんでした。
また、SIVの遺伝子組み換えによって人工的にHIV由来のEnvを作らせるようにしたSHIVというウイルスを使い、同様にしてアカゲザルにSHIVを感染させる実験をしたところ、やはりワクチンを接種したアカゲザルがSHIVに感染しにくくなる効果が見られました。
研究班は「これらのデータは、Ad/Envワクチンがアカゲザルにおいて中和耐性ウイルスチャレンジに抵抗する頑健な防御作用を示す」と結論しています。
AIDSは免疫の働きを弱らせて深刻な細菌感染などを起こすことをはじめ、カポジ肉腫や認知機能障害などにつながる場合もあり、治療薬が進歩したとはいえ現在でも恐るべき感染症です。HIV感染を防ぐことが重要な対策であり、ワクチンによる予防は長年の課題とされてきました。この研究は難問の解決に挑むものであり、今後の進展に期待がかかります。
執筆者
Protective efficacy of adenovirus-protein vaccines against SIV challenges in rhesus monkeys.
Science. 2015 Jul 2 [Epub ahead of print]
[PMID: 26138104]
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