◆薬物と漢方薬成分を同時に与える
研究班は、肝臓に対して毒性のあるジメチルニトロソアミンをラットに与えて、線維化などの変化を起こしました。ほかのラットにはジメチルニトロソアミンと同時に黄芩・大黄抽出物を与え、肝臓に違いが現れるかどうかを調べました。
◆線維化抑制ほかの効果あり
ジメチルニトロソアミンとともに黄芩・大黄抽出物を与えたラットでは、ジメチルニトロソアミンだけを与えたラットに比べて、肝臓の組織に観察される線維化などの変化が小さく、また線維化の働きに関わるとされるα-SMAという物質が少なくなっていました。さらに、肝臓のダメージを反映して血液中で増加するAST、ALT、ビリルビンという物質がいずれも少なく、肝臓でタンパク質を合成する機能を反映する血液中のアルブミンは多くなっていました。
研究班は「これらの結果は、黄芩・大黄抽出物が、主に酸化還元状態を制御し、その結果細胞内分子の修飾を調整することによって肝線維症を有効に予防しうることを示している」と結論しています。
ラットの結果がどの程度人間に当てはまるかはわかりません。また、この研究では薬物を使って肝機能異常を人工的に起こしていますが、慢性肝炎などの状態にも同様に有効かどうかは別に確かめなければわかりません。とはいえ、黄芩も大黄も実際に肝臓に良い効果を期待して使われることがあり、その効果が観察されている可能性は考えられます。漢方薬が働くメカニズムは西洋医学の枠組みで理解されていない部分もあり、詳しく解明されればさらに有効な治療につながるかもしれません。
執筆者
Herbal formula, Scutellariae radix and Rhei rhizoma attenuate dimethylnitrosamine-induced liver fibrosis in a rat model.
Sci Rep. 2015 Jul 2
[PMID: 26133262]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。