2015.07.02 | ニュース

糖尿病の新薬と関係が?正常な血糖値でも起こった、重症症状「糖尿病性ケトアシドーシス」

アメリカでの症例報告から

from Diabetes care

糖尿病の新薬と関係が?正常な血糖値でも起こった、重症症状「糖尿病性ケトアシドーシス」の写真

SGLT2阻害薬は体から糖分を排出させる作用があり、2型糖尿病の薬として使われています。ですが今回著者らは、SGLT2阻害薬を服用した糖尿病患者で、「糖尿病性ケトアシドーシス」という非常に危険な状態が引き起こされた症例を見つけました。副作用の可能性が否定できず、また普通は血糖値が高いときに起こる糖尿病性ケトアシドーシスが、血糖値は高くないにも関わらず起こったとされています。

◆症例研究からの報告

著者らは、具体的な症例報告から、SGLT2阻害薬を使っていたときに糖尿病性ケトアシドーシスなどが起こった例を示しています。糖尿病性ケトアシドーシスは主に1型糖尿病で生じ、吐き気、 嘔吐、腹痛を引き起こし、昏睡や、最悪の場合には死亡に至る恐れがあります。


◆正常血糖値での発症が13事例あった

以下が著者らの報告です。

アメリカの様々な場所で治療を受けている9人の糖尿病患者、7人は1型糖尿病、2人は2型糖尿病において、SGLT-2阻害薬と関連した正常血糖での糖尿病性ケトアシドーシスまたはケトーシスが生じた事例が13回あった。これらの患者では高血糖症が生じないため、患者や介護者は、急を要する性質の問題と認識するまで時間がかかった。

つまり9人の患者に対しのべ13回、正常血糖での糖尿病性ケトアシドーシスまたはケトーシスが生じました。ケトーシスは糖尿病性ケトアシドーシスと同様、血液に「ケトン体」と呼ばれる物質が過剰になった状態のことで、体内の糖分が多い時は血液の酸性化を引き起こし、死には至らないまでもやはり嘔吐や腹痛および倦怠感などを引き起こします。

著者らは、「SGLT2阻害薬は、非インスリン依存的な糖排泄、高グルカゴン血症、体液量減少を伴うために、正常血糖での糖尿病性ケトアシドーシスまたはケトーシスを引き起こすように思える」と述べています。

 

ここでは頻度が算出されていませんが、重篤な症状であり、仮に少数でも重要な結果です。本当に因果関係があるのか、どんな場合に多発するのか等、更なる調査が望まれます。

以前の記事でSGLT2阻害薬の1つカナグリフロジンは糖尿病の検査値を下げる効果と体重を減らす効果があると紹介しましたが、やはり新しい薬は予期せぬ効果も出るので、試行錯誤を重ねながら、より良い製品の開発に繋げていって欲しいです。

参考記事
「新たな糖尿病治療薬「カナグリフロジン」、痩せる効果とHbA1cを下げる効果」
http://medley.life/news/item/557ed038192351f2004a0e5e

執筆者

高田

参考文献

Euglycemic Diabetic Ketoacidosis: A Potential Complication of Treatment With Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibition.

Diabetes Care. 2015 Jun 15

 

[PMID: 26078479] http://care.diabetesjournals.org/content/early/2015/06/03/dc15-0843.abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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