パーキンソン病患者のバランストレーニングに太極拳が有効

パーキンソン病では、姿勢反射障害と呼ばれる、バランスが悪くなる症状が見られます。このバランス障害の治療法は確立されていません。今回の研究では、太極拳をバランス障害の治療として試したところ、筋力トレーニングやストレッチといった運動療法よりも有効という結果が出ました。
◆太極拳群、筋トレ群、ストレッチ群に分類
今回の調査では、195名のパーキンソン病患者をランダムに3つのグループに振り分け、以下の方法で太極拳の効果を検証しました。
ホーエン・ヤール分類1-4[...]のパーキンソン病患者195名を太極拳群、筋力トレーニング群、ストレッチ群の3群中1群にランダムに振り分けた。
患者は、24週間、週2回、60分の運動に参加した。
太極拳と、筋力トレーニング、ストレッチのそれぞれを行う群で運動能力やバランスを取る能力を評価しました。
◆太極拳は筋トレやストレッチよりもバランス能力を向上させる
調査の結果、太極拳群は、筋力トレーニング群やストレッチ群と比べてバランステストを
ストレッチ群と比較するとすべてにおいて、筋力トレーニング群と比較すると歩行中の1歩の距離や上肢到達距離において、有意な改善が認められた。
転倒回数については、太極拳群をストレッチ群と比較すると低くなっていたが、筋力トレーニング群と比較すると変わらなかった。
太極拳の効果は、介入後3ヶ月まで持続した。
太極拳によって、筋力トレーニングやストレッチをするよりも、バランスや運動能力が改善したという結果でした。
筆者らは、太極拳が「軽度から中等度のパーキンソン病患者において、バランス障害を改善する」とまとめています。
近年、リハビリテーション分野では太極拳が注目され始めています。今後、太極拳のどのような可能性が見出されていくか動向を見守りたいところです。
執筆者
Tai chi and postural stability in patients with Parkinson's disease.
N Engl J Med. 2012 Feb 9
[PMID: 22316445]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。