◆体重減少などの症状が見られるがん患者を対象に
筆者は以下の方法で、アナモレリンの効果と安全性を検証しました。
治療不可能な、または進行したがんがあり、体重が5%以上減少した患者を対象に、多施設プラセボ対照二重盲検比較試験を実施した。
治療不可能な、または進行したがんと診断され、5%以上の体重減少を経験した患者を対象としました。
患者については、まず体重の減少度に応じて「5~15%」「15%未満」に分類し、それぞれの分類の中で、その後1日1回、12週間にわたりアナモレリンを服用する群(44名)または偽薬を服用するプラセボ群(38名)にランダムに振り分けられました。
薬を少なくとも1回投与した患者に対しては、全体重のうち体脂肪を除いた総量を表す「除脂肪体重」のデータなどを参考にしながら、アナモレリンの安全性を検証しました。安全性の検証においては、もともとあるがんの悪化、もともと行われている治療の副作用、またアナモレリンの副作用を含む、何らかの症状の発生または悪化を調べました。
◆アナモレリン使用群において体重が増加
研究結果は以下のとおりです。
12週終了後、アナモレリン使用群のうち38名が1.89kg(95%信頼区間:0.84~2.95)という最小二乗平均値で除脂肪体重の増加を経験した。一方、プラセボ群では36名が除脂肪体重の減少を経験し、その最小二乗平均値は-0.20kg(95%信頼区間:-1.23~0.83)であった。よって、両群の差は2.09kgとなった(95%信頼区間:0.94~3.25、p=0.0006)。
12週の治療終了後、アナモレリン使用群において除脂肪体重がプラセボ群よりも平均して2.09kg多く増加していました。
安全性について、アナモレリン使用群44名のうち、42名が何らかの症状を訴えました。なかには疲労、無気力、心房細動、呼吸困難といった症状も確認されましたが、これらが治療関連のものであるかどうかについては不明です。
一方、プラセボ群においては、38名のうち33名に肺炎、貧血、血小板減少症、腹痛、不安感、呼吸障害といった症状が見られました。
食欲の低下などの症状が見られるがん患者に対してアナモレリンを使うと、プラセボ群に比べ体重を回復させる結果が得られたことから、筆者らは「12週にわたるアナモレリン治療はがん患者の食欲不振・悪液質症候群に対してより良い臨床反応結果をもたらす」という見解を示しています。
がんが進行した患者に見られる食欲不振・悪液質症候群に対して、アナモレリンの投与により症状が少しでも和らぐのであれば、使用する価値があると言えるかもしれません。これが生存率向上に結びつけばなおのこと、そうでなかったとしても、がん治療の中では、こうした苦しい症状を和らげる治療も重要なのではないでしょうか。
執筆者
Anamorelin for patients with cancer cachexia: an integrated analysis of two phase 2, randomised, placebo-controlled, double-blind trials.
The Lancet Oncology. 2015 Jan
[PMID: 25524795]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。