2015.05.29 | ニュース

子宮頚がんワクチンで、がんウイルスの活動を抑えられた

カナダの中学生26万人に接種

from Pediatrics

子宮頚がんワクチンで、がんウイルスの活動を抑えられたの写真

子宮頚がんは若い女性でも発症する可能性のある癌のひとつです。子宮頚がんの主な原因は、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であると考えられています。日本でも、2013年から小学校6年生から高校1年生の女子生徒に対して、HPVワクチンの定期接種が始まりました。今回、カナダの研究チームが4価HPVワクチンの有効性を大規模なデータを用いて調べ、接種後早期からの有効性を報告しました。

◆カナダの女子生徒を追跡調査

研究チームは、カナダ・オンタリオ州で、第8学年(中学2年生)~第9学年(中学3年生)の女子生徒260,493人を対象に、4価HPVワクチン接種による早期の有効性を調べました。

ワクチンの効果として、「子宮頚部異形成」、「肛門性器疣贅」という、HPVの感染が原因で起こる異常が発生する頻度を調べました。

子宮頚がんは、HPV感染により、正常→異形成→上皮内がん→浸潤がんという順に進行していきます。子宮頚部異形成からがんにまで進行するため前がん病変といわれますが、がんに至るのはごく一部で、大部分は自己の免疫力の働きでHPVが排除され炎症が治まれば正常に戻ります。肛門性器疣贅とは、がんではありませんが、子宮頚がんと同様にHPVの感染が原因で、肛門・性器の皮膚や粘膜の過形成が起こり、いぼができてしまう病気です。

 

◆前がん病変を44%減

調査結果は、以下の通りです。

4価HPVワクチン接種無償化プログラムが適用された2学年の女子生徒128,712人と、無償化プログラム適用前の2学年の女子生徒131,781人について、子宮頚部異形成と肛門性器疣贅の発生頻度を比較した。

その結果、ワクチン接種により、子宮頚部異形成の発生数は1000人あたり5.7人減少し(95%信頼区間 -9.91から-1.50)、相対リスクは44%減少した(相対リスク0.56、95%信頼区間0.36から0.87)。

今回の研究では、4価HPVワクチン接種は子宮頚部異形成の発生リスクを44%減少させました。また、肛門性器疣贅について、統計的に有意な違いにはなりませんでしたが、発生リスクを43%減少させたという計算になりました。これらの結果から、4価HPVワクチン接種の有効性が示唆されました。

研究チームは、「14歳~17歳の女子生徒に対する4価HPVワクチンの接種後早期からの有効性が示された」と結論づけています。

日本では、HPVワクチン接種開始後、痛みなどの副作用が強いと話題になっていますが、この調査結果を見る限りでは、ワクチンの有効性はやはり高いようです。産婦人科の医師の方々は、どのようにこの結果をご覧になりますか?

執筆者

田嶋 美裕

参考文献

The early benefits of human papillomavirus vaccination on cervical dysplasia and anogenital warts.

Pediatrics. 2015 May

[PMID: 25917991]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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