2015.05.15 | ニュース

特殊なコンピュータの導入で変形性膝関節症に対する再手術の割合が減少

約30万人の全人工膝関節術を行った患者を分析

from The Journal of bone and joint surgery. American volume

特殊なコンピュータの導入で変形性膝関節症に対する再手術の割合が減少の写真

変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減ることで痛みを起こす病気です。日常生活に支障をきたした場合に全人工膝関節置換術という手術をすることがあります。うまくいかないと再置換というやり直しの手術が必要になる、難しい手術ですが、今回、オーストラリアの研究チームが、65歳未満の患者に対してコンピュータ支援システムを使った手術で再置換の割合が減少したことを報告しました。

◆全人工膝関節置換術、コンピュータ支援システムとは?

全人工膝関節置換術は、変形した関節を金具やセラミックなどできたインプラントで置き替える手術のことです。

コンピュータ支援システムは、挿入するインプラントの大きさ、入れる位置、角度などをコンピュータでシュミレートするシステムです。

 

◆コンピュータ支援システムを使用した場合と使用しない場合を比較

コンピュータ支援システムの使用と再置換の関係をみるために以下の方法が行われました。

オーストラリアにおいて、2003年1月1日から2012年12月31日の期間に施行され、コンピュータ支援システムを使用した場合も使用していない場合も含む全例の、再手術でない全人工膝関節置換術について、その後再置換をした累積割合を評価した。

加えて、再置換手術の種類、再置換が必要になった理由、さらに年齢、執刀医の経験、骨セメントの使用による効果を評価した。

 

◆コンピュータ支援システムの使用により65歳未満で再置換率減少

この研究から以下のような結果が得られました。

全人工膝関節置換術のうちコンピュータ支援システムは44,573人(全体の14.1%)で使われた。

コンピュータ支援システムを使用しない全置換術を受けた65歳未満の患者は再置換の累積割合が9年間で7.8%(95% CI = 7.5 から 8.2)、使用した場合が6.3%(95% CI = 5.5 から 7.3)だった。

コンピュータ支援システムを使用することによって、全人工膝関節置換術の再置換の最も多い理由である関節のゆるみや骨溶解を理由にした再置換率が有意に減少した(HR = 1.38 [95% CI = 1.13 から1.67]、p = 0.001)。

研究チームは「コンピュータ支援システムは65歳未満の患者に全人工膝関節置換術を行ったあとの再置換全体の率と、関節のゆるみ・骨溶解による再置換率を減少させた」と述べています。

コンピュータ支援システムの使用が、65歳未満の患者に人工膝関節置換術を行う上で有益と判断しうる材料がひとつ提示されました。

 

日本においてもこのシステムを使用している病院が増えてきているようです。

整形外科医の方、特にこのシステムを使用して手術をされた方は、今回の結果をどのように考えられますか?

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Computer Navigation for Total Knee Arthroplasty Reduces Revision Rate for Patients Less Than Sixty-five Years of Age.

J Bone Joint Surg Am. 2015 Apr 15

[PMID: 25878307]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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