さいせいふりょうせいひんけつ
再生不良性貧血
造血幹細胞が減少することによって血液中の血球成分(白血球、赤血球、血小板)が減少する病気。動悸や息切れ、出血が起こりやすくなり、感染症にかかりやすくなることもある
1人の医師がチェック 0回の改訂 最終更新: 2020.07.28

再生不良性貧血の基礎知識

POINT 再生不良性貧血とは

再生不良性貧血は血球成分(白血球、赤血球、血小板)が減少してしまう病気です。3種類のうちの全てが減少してしまうことが多く、その影響を受けて息切れや動悸、発熱、胃からの出血などが見られやすいです。 治療は軽症であれば無治療で様子見となることもありますが、免疫抑制剤を用いたり骨髄移植を行ったりすることが多く、重症度や年齢などに応じて最適な治療を選択することになります。 再生不良性貧血で困っている人は血液内科を受診してください。

再生不良性貧血について

  • 血液中の血球成分(白血球赤血球血小板)が減少してしまう病気
    • 一般的には3種類の血球のすべてが減少するが、軽症の場合には一部の血球が減少するということもある
  • 血球成分の減り方によって重症度がステージ1-5の5段階で決められる
  • 骨髄と呼ばれる骨の中にある組織が少なくなること(低形成)も再生不良性貧血の特徴である
    • 造血幹細胞が減ることで血球を作る機能が落ちてしまっている
      • 何らかの免疫反応によって造血幹細胞が損傷したり機能が低下したりしていることが原因と考えられているが、その詳細な機序は明らかになっていない
    • 減ってしまった骨髄の替わりに脂肪が存在することが多い
  • 重症になると半数が半年以内に死亡するほどの難病であったが、治療方法が改良されつつあることにより9割ほどの人は長期生存できるようになった
    • 重症の場合(特に好中球数が著しく少ない人)は依然として予後不良であるので、健康診断などで血球数異常を指摘された人は、その後の診察をきちんと受けるようにすることが大切である
  • 罹患者はおよそ1.1万人ほどいる(平成24年のデータ)
    • 男女比はわずかに男性の方が多いが、大きな差はない
    • 罹患年齢は、10-20代と70-80代が多い
    • 遺伝が証明されているタイプ(ファンコニ貧血)はあるが、その他の再生不良性貧血は遺伝するかどうか明らかになっていない
  • 他の血液の病気に移行することがある

再生不良性貧血の症状

  • 症状は3つの血球成分のうちどのタイプが減っているのかで異なる
    • 白血球が減少している場合に見られやすい症状:感染による症状
      • 発熱
      • 倦怠感
      • 息切れ など
    • 赤血球が減少している場合に見られやすい症状:貧血による症状
      • 動悸
      • 息切れ
      • めまい
      • 易疲労感(疲れやすい)
      • 頭痛
      • 蒼白な顔面 など
    • 血小板が減少している場合に見られやすい症状:易出血性による症状
      • あざ(皮下出血
      • 歯ぐきからの出血
      • 鼻血
      • 下血血便
      • 手足のしびれ(脳出血の症状)
      • しゃべりにくさ(脳出血の症状) など

再生不良性貧血の検査・診断

  • 血液検査
    • 血球成分の減少の程度を確認する
  • 骨髄検査(骨髄穿刺、骨髄生検
    • 骨髄の萎縮と脂肪への置き換わりがないかを確認する
    • 骨髄における血球成分の変化を確認する
      • 特に幼若顆粒球・赤芽球・巨核球の減少がないかを確認する
  • 染色体検査
    • 再生不良性貧血につながる染色体(8トリソミー、7モノソミー、13モノソミーなど)の異常がないかを確認する
  • MRI検査
    • 背骨(胸椎や腰椎)内の骨髄の様子を確認する
    • 特に骨髄と置き換わった脂肪の存在の有無を確認する
  • フローサイトメトリー

再生不良性貧血の治療法

  • 重症度によって治療方法が異なるが、進行した再生不良性貧血が根治に至ることは簡単ではない
    • 血球を回復させる治療や症状を和らげる治療が行われる
  • 治療方法の例
    • 軽症患者に対する血球を回復させる治療
      • まずは自然改善の可能性を考えて、治療を行わずに様子見することが多い
      • 自然治癒がない場合には、シクロスポリンという免疫抑制剤を数ヶ月用いる
      • それでも改善がなければ、蛋白同化ステロイドを用いて治療する
      • 輸血が必要なくらい赤血球数が低下している人には、 抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンや抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリンを用いることがある
    • 重症患者に対する血球を回復させる治療
      • シクロスポリンと抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンあるいは抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリンを用いた免疫抑制治療に加えて、骨髄移植が選択肢にあがる
        • 患者年齢が40歳未満で白血球の型(HLA)が一致する骨髄提供者(ドナー)が家族にいる場合には、骨髄移植の治療成績が良いとされる
        • 患者年齢が40歳未満で白血球の型(HLA)が一致する骨髄提供者(ドナー)が家族にいない場合にも、免疫抑制治療が無効の場合には家族以外からの骨髄移植が考慮される
        • 50歳未満の患者で免疫抑制治療が無効の場合には、骨髄移植が考慮される
    • 症状を和らげる治療
      • 白血球数を回復させる治療
        • 著しく好中球数が少ない場合や感染症が起こっている場合に治療が検討される
        • 顆粒球コロニ一刺激因子(Granulocyte Colony-Stimulating Factor: G-CSF)を使用する
      • 赤血球数を回復させる治療
        • 血中ヘモグロビン濃度が7g/dL以下になった場合や貧血症状が強い場合に治療が検討される
        • 赤血球輸血が行われる
      • 血小板を回復される治療
        • 明らかに出血しやすい状況にある場合や出血によって困っている場合に治療が検討される
        • 血小板輸血が行われる
        • 何回も血小板を投与すると血小板に対する抗体がだんだんと体内にできるため、回数が重なっていくと輸血の効果が薄れていく

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