深部静脈血栓症(DVT)の検査について:血液検査や画像検査など
深部静脈血栓症(DVT)は、主にふくらはぎや太腿の筋肉よりも深いところを走る血管に血の塊(
1. 身体診察
受診のきっかけとなった
【DVTで有名な診察
- Homans(ホーマンズ)徴候:足首を上向きに強く反り返らせるとふくらはぎが痛む
- Lowenberg(ローエンベルグ)徴候:ふくらはぎを血圧計で加圧すると痛む
上記のような所見が見られるのが典型的ですが、DVTでも症状があまり出ないこともよくあります。特に膝よりも下に血栓ができた場合には、症状が出にくく、身体診察でもはっきりと異常が分からないこともあります。
このように症状の乏しいDVTもよくあるため、「手術前の全身チェックでたまたまDVTが見つかった」、「
2. 血液検査(D-ダイマーなど)
DVTが疑われる人にはまず血液検査が行われます。血液検査ではさまざまな項目が調べられ、現在の全身の状態を把握したり、今後どのような検査・治療がよいか決定するのに重要なデータが得られます。血栓ができやすくなる病気のチェックにも重要な役割を果たします。
DVTの診断においては「D-ダイマー」という検査項目が重要です。D-ダイマーはさまざまな原因で異常値を示します。DVTの場合にも非常に高い確率でD-ダイマーが異常値となることが分かっているため、もしD-ダイマーが正常値であればDVTの可能性はかなり低くなります。一方で、DVT以外の状態でもD-ダイマーが異常値を示すものは多いので、「D-ダイマーが異常値だからDVTである」とは言えません。
このように、D-ダイマーは「DVTが存在しない」ことを示すのに有用な検査項目です。
3. 超音波(エコー)検査
超音波検査は、検査技師さんやお医者さんが皮膚の上から超音波の出る機械を当てて行う検査です。脚などの血管を丁寧に観察して血栓の有無を判定していきます。放射線を使わないので被曝の心配がない点、造影CT検査と違って検査前の注射が必要ない点などで、身体に負担の少ない検査方法です。
一方で、造影CT検査と比較すると精度が劣る点、検査の担当者によって検査の質に差が出やすい点などは欠点かもしれません。また、造影CT検査では胸部から足の先までまとめて検査することができますが、超音波検査では機械を当てたところしか血栓の有無がわかりません。したがって、血栓が脚以外にも存在することが疑われる場合などは超音波検査だけでは不十分となります。
4. 画像検査
画像検査は血栓を画像として撮影することで、DVTの確定診断をつけることができます。超音波検査も画像検査に含むことがありますが、ここではCT検査や
造影CT検査
造影CT検査では、検査画像が明瞭になる「造影剤」という薬を注射した後に、首や胸から足までの輪切りの写真を撮影します。近年はCT検査の装置の性能がかなり良くなっており、高精度でDVTを検出することができます。また、脚にできた血栓が心臓や肺に流れていってしまっている場合(肺血栓
デメリットとしては、まず放射線被曝の問題があります。1回のCT検査での被曝量はあまり気にしないで良い程度なので問題ありませんが、妊娠中の場合などは注意が必要です。また、造影剤を注射することにより
MR静脈撮影法
MR静脈撮影法はMRI検査の技術を用いて、放射線や造影剤を使わないで血管を撮影できる検査です。身体への負担が少ない検査ではあるのですが、検査時間が長くて緊急時に使えないこと、検査精度が十分とは言い難いこと、検査できる施設が限られていること、などの問題があって近年はあまり行われません。
静脈造影検査
脚にある血栓を明らかにするために行われる検査です。足の甲の静脈から造影剤を流しこみ、放射線をつかって血栓を写し出します。血栓を見つけ出す精度は最も高いとされていますが、足の甲の血管に針を刺すのは痛みが強く、身体的な負担は小さくありません。そのため、近年は診断のために行われることは少なくなっています。造影剤の副作用や、放射線による被曝の問題もあります。
参考文献
肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
(2020.5.20閲覧)