けいぶのうほう、せいちゅうけいのうほう、そっけいのうほう
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)
首の皮膚の下にできた袋状の構造(のう胞)のこと。生まれつきあるものと、成長してからできるものがある。代表的なものに正中頸嚢胞や側頸嚢胞がある。
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最終更新: 2017.12.01
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)の基礎知識
POINT 頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)とは
頸部嚢胞は首に液体の入った袋ができる病気です。生まれつきあるものと、成長してからできるものがあります。生まれつきのものには、正中頸嚢胞、側頸嚢胞、嚢胞性リンパ管腫、皮様嚢腫などがあります。成長してからできるものには、がま腫やリンパ節の腫れなどがあります。生まれつきの代表例は、首の中央にできる正中頸嚢胞と、側頸部にできる側頸嚢胞です。のう胞が一部皮膚に交通して瘻孔があく場合があります。生まれる前になくなるはずの構造物が残存することが原因になります。 頸部嚢胞の症状は頸部の柔らかいしこりで、感染を起こすと大きくなったり、痛みがでることがあります。診断には超音波検査やMRI検査、必要に応じて針で細胞を採取して調べる検査を行います。治療は手術での摘出が基本ですが、内部に薬を注入して小さくする治療などもあります。まずは近くの耳鼻咽喉科や内科、こどもの場合は小児科のクリニックに受診しましょう。必要に応じて大きな病院への受診を指示されることがあります。
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)について
- くびに液体の入った袋ができる病気
うまれつきある
先天性 の嚢胞 と、成長してからできる嚢胞がある正中頸嚢胞、側頸嚢胞
- 先天性の頸部嚢胞の代表例
- 本来は生まれる前に退化してなくなるはずの構造が消滅せず、袋状の構造になって残ったもの
- 袋状の「嚢胞」になることが多いが、凹み(陥凹)やトンネル(
瘻 孔:ろうこう)になることもある - できる場所によって2つに分かれる
- 生まれつきあるが、瘻孔がない場合は、20-40歳代で気づくこともある
皮様嚢腫(ひようのうしゅ)
- 皮膚や皮膚に関連したものから嚢胞ができる疾患
-
- 舌下腺から唾液がうまく出なくなり、唾液が袋状に溜まった疾患
- 顎の下あたりにできることが多い
頸部リンパ節
腫脹
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)の症状
- 首の周辺にしこりができる
- 柔らかいしこりであることが多い
- 通常痛みはない
- 感染し
炎症 を伴うと、急激な大きくなり、痛みが出る
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)の検査・診断
- 画像検査
頚部超音波検査 CT 検査MRI 検査嚢胞 の膜の厚さ、内部の貯留液の濃度、内部構造を観察でき、頸部嚢胞の鑑別 に有用
- 病理検査
- 嚢胞に針を刺して細胞を取り顕微鏡で調べて、どんな種類のしこりか推定する検査
- 主に
良性腫瘍 と悪性腫瘍 を区別するために行う - 悪性腫瘍の場合は治療方針が異なるため、手術の前にこの検査を行い、治療方針を決定する
頸部嚢胞(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)の治療法
- 感染をしている場合は、まず
抗菌薬 を使用して、炎症 が治った後に手術を予定する - 正中頸嚢胞、側頸
嚢胞 - 根治治療は手術
- 嚢胞と
瘻 孔をともに摘出する手術が最も確実な治療方法 - 繰り返し大きくなったり、感染したりする場合は手術
- 正中頸嚢胞では、
がん が混じることも稀にあり、術後の診断でがんの診断がつくこともある
- 嚢胞と
- 硬化療法
- 炎症を起こす薬を嚢胞に注入して、内部をくっつけて膨らまなくする硬化療法もあるが、一般的な治療方法ではない
- 根治治療は手術
- 嚢胞性リンパ管腫
- 根治治療のためには手術が望ましい
- 大きい嚢胞や、境界が不明瞭、周囲の臓器と近くて摘出が困難な場合は、硬化療法を行う
- 炎症を起こす薬を嚢胞に注入して、内部をくっつけて膨らまなくする治療方法
- 治療後に発熱を伴う
- 再発することもあるが、手術より体の負担が少ないので、こどもの大きな嚢胞では
第一選択 の治療
- 皮様嚢腫
- 根治治療は手術
- がま腫
- 根治治療は手術で、原因となる舌下腺ごと切り取る
- がま腫に穴を開けるのみの治療では再発が多いため、舌下腺全摘術を行う
- 炎症を起こす薬を嚢胞に注入して、内部をくっつけて膨らまなくする硬化療法も効果的
- 硬化療法は厳密な保険適応ではない
- 根治治療は手術で、原因となる舌下腺ごと切り取る
- 頸部
リンパ節 腫脹 - 原因疾患によって、治療方法が異なる
- 感染性リンパ節の場合は炎症をおさえる薬を使用する
- がんが原因であれば、手術や
放射線治療 、化学療法 などのがんの治療を行う