せいそうねんてんしょう(せいさくねんてんしょう)
精巣捻転症(精索捻転症)
精巣そのものではなく、精巣とつながっている血管がねじれる病気。精巣が壊死してしまうことがあるので、発症後数時間以内での緊急手術が必要となる
5人の医師がチェック 38回の改訂 最終更新: 2022.02.09

精巣捻転症(精索捻転症)の基礎知識

POINT 精巣捻転症(精索捻転症)とは

精巣へ向かう血管の束がねじれる病気です。精巣そのものではなく精索と呼ばれる部分がねじれて生じるので精索捻転症(せいさくねんてんしょう)ともいわれます。精巣捻転症は新生児や思春期に多く、下腹部痛や陰嚢内の激痛、精巣が腫れあがるなどの症状がみられます。 小児や新生児は症状を伝えられないので、原因がわからずに泣き続けるときなどは精巣捻転症が原因となっていることもあります。超音波検査で精巣への血流が確認できない場合は精巣捻転症の可能性が極めて高いので、緊急手術を行い精索のねじれを元に戻します。手術は早いほどよく発症後6時間以内に治療ができれば精巣の機能を温存できる可能性が高いと考えられています。 精巣の痛みが急激に起きてそれが持続する場合は直ちに泌尿器科を受診し、精巣捻転症かどうかを確認してください。

精巣捻転症(精索捻転症)について

  • 概要
    • 精巣そのものではなく、精巣の血管がねじれる病気
  • メカニズム
    • 精索には精巣に出入りする血管と精液の通り路の精管が入っており、この部分がねじれると精巣に血液が通わなくなり強い痛みを伴う
    • 放っておくと精巣が壊死し、精巣の摘出が必要となる場合がある
    • 発症から数時間内にねじれを解除する必要があり、緊急手術を行う
  • 主な原因
    • 新生児では精巣が陰嚢(いんのう)のなかで十分固定されておらず回転しやすいこと
    • 思春期には第二次性徴に精巣の重量が増えるが、この時に周囲からの固定が十分でないこと
  • 頻度
    • 新生児期と思春期に多い

精巣捻転症(精索捻転症)の症状

  • 片側の精巣から下腹部にかけての痛みが急激に現れる
  • 吐き気を伴う
  • 発熱を伴う場合がある
  • 陰嚢部は徐々にふくらんできて、触るとひどく痛む
    • 症状が正確に伝えられない年少児では、「おなかが痛い」という訴えのために、陰嚢の観察が行われずに見落とされることがある
  • 痛みを感じる神経の問題で、陰嚢だけでなく腹痛が生じることもある

精巣捻転症(精索捻転症)の検査・診断

  • 身体診察を行い精巣の様子とどういった場面で痛みが悪化するのかを調べる
    • 陰嚢を持ち上げると痛みが悪化するのが特徴(プレーン徴候)
    • 挙睾筋反射の有無
  • 超音波検査:精巣の血液の流れを確認する

精巣捻転症(精索捻転症)の治療法

  • 主な治療法
    • 陰嚢を切開し、血管のねじれを元にもどす手術を行う
  • 疾患の経過、関わり方
    • ねじれの程度により、血液の流れが数時間以上遮断されると精巣の機能は失われてしまうのことがあり、その場合は摘出する
    • できるだけ早期に陰嚢を切開し、ねじれを元にもどす必要がある
    • 診断が確実でない場合にも、緊急手術を検討する

精巣捻転症(精索捻転症)の経過と病院探しのポイント

精巣捻転症(精索捻転症)が心配な方

精巣捻転は、主に小児から20代の男性に起こります。命に関わることはまれですが、精巣摘出が必要になった場合、不妊の原因となり得ることから緊急性が高い疾患と言えます。

精巣捻転の症状は、第一に精巣の強い痛みです。小児の場合は、精巣ではなく「お腹が痛い」という訴えになることがありますが、お腹そのものよりも精巣を触れると痛がることが特徴です。吐き気が出て、実際に嘔吐してしまう子もいます。迅速な対応が求められることから、これらの症状があって疑わしい場合にはすぐに近くの泌尿器科クリニックや救急外来を受診されることをお勧めします。適切かつ迅速な対応が必要な疾患ですので、遠くの専門病院を探すよりも、近場の医者(泌尿器科医か救急医)にまず診てもらった上で、処置を受けるか判断を仰ぐのが良いでしょう。精巣の痛みを伴う同様の病気には精巣上体炎精巣炎といったものがあり、診察に加えてエコーの検査で診断をします。

精巣捻転の診断が確実となれば、応急の対応として手で精巣を正しい方向へ戻すことで捻転が治ることがあります。ただし経験のある医師以外が行うとねじれを悪化させてしまうことがあるため、ご家族が自己判断で行うことは勧められません。また、熟練した医師でもこの方法が成功する割合は高くはないので、より確実性が高い緊急手術が行われることが多いです。精巣が機能を失うことなく治療できる割合は、発症から6時間以内で90%、発症から12時間以内で50%、発症から24時間以内で10%と報告されています。このような緊急性の高い疾患であるため、診断が確実でなくとも「精巣捻転の可能性がある」というだけで、手術に踏み切ることが多いです。

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