こうれいしゃてんかん
高齢者てんかん
高齢者にみられる、てんかん発作の総称
12人の医師がチェック 69回の改訂 最終更新: 2018.08.13

Beta 高齢者てんかんのQ&A

    症候性てんかんが原因として多い「高齢者てんかん」とは?

    「てんかん」と聞いた時にどういうイメージを持たれるでしょうか。子どもの病気という印象であったり、突然意識を失ってガタガタふるえたりする病気という印象であったり、様々だと思います。

    高齢者が増えている現代社会において、「高齢者のてんかん」が話題になっています。これは、若くしててんかんを発症した方が高齢になってきているというだけではありません。加齢に伴い、脳卒中(原因として最多)、頭部外傷、脳腫瘍、アルツハイマー型認知症などの病気になる方が増えていきますが、これらは脳に傷跡を残してしまい、結果、てんかんを発症する原因となってしまいます。他の病気が原因となって二次的に起こるてんかんを「症候性てんかん」と言い、高齢者で発症するてんかんではこの症候性てんかんが多くの割合を占めます。ですが、原因がはっきり特定することの難しい「全般性てんかん」も、まれではありますがみられることがあります。

    高齢者てんかんの発作の種類と症状について教えてください

    高齢発症のてんかんで最も多い発作型は、複雑部分発作と呼ばれるものです。まず、典型的な複雑部分発作とはどういう発作か、ということについて説明します。これは体がガクガクふるえるタイプの発作ではありません。簡単に言えば「激しいけいれんを伴わないが意識が悪くなってしまう発作」です。それまで行っていた動作をやめ、周りから見るとぼーっとしたように見えます。呼びかけても返事をしなかったり、反応があったとしても会話が成立しないようなぼんやりした状態となったりします。その間に自動症という症状がみられることがあります。具体的には、口をモグモグさせたり、手をモゾモゾさせたりします。これが発作で、発作の後はぼーっとした状態が続きます。しばらくすると元の状態に戻りますが、発作の間のことは覚えていません。

    ガクガクふるえるタイプの発作と違い、このような複雑部分発作は診断するのは比較的難しいです。上で説明したような典型的な発作なら、てんかんの患者を普段診ている医者がてんかん発作を疑うことは難しくないですが、高齢者のてんかんの場合には自動症が軽い場合があり発作後のぼーっとした状態もかなり長くて、数時間あるいは数日単位で続くことすらあります。こういった状況では複雑部分発作を疑うことは非常に難しくなります。さらに、高齢者は自分の症状を正確に詳しく説明できないことが多いことや、一人暮らしの高齢者だと発作の時の様子を見ている人がいないことなども、診断をさらに難しくしています。

    高齢者てんかんはどのように診断するのですか?

    てんかんの場合、発作がなければ症状はなく、元気な状態であることが多いので、その状態で診察するだけでは診断には不十分です。発作の時の様子を詳しく聞くことが重要です。本人は発作のことを覚えていないことが多いため、周囲の人から情報を集めておくことが有効となります。

    意識を失ってしまった場合、てんかんと区別しなければならない最も注意すべき病気は失神です。失神であってもけいれんを伴うことがあるので、更に注意が必要となります。失神は不整脈や大動脈弁狭窄症など循環器系の病気が原因で起きることがあります。そのために、循環器系の検査としては、通常の心電図検査に加え、心臓の超音波検査や一日心電図をつけておくホルター心電図検査などを行う場合があります。循環器系の病気による失神は、見逃してしまうと命に関わることがあるのでしっかり検査しておきます。

    また、てんかんによって意識を失ってしまい、発作の間のことを覚えていないということから「物忘れが増えた」ということで認知症と間違えられてしまうことがあります。実際、認知症と言われている高齢者の中にはこのようなてんかん発作が隠れていることがあるので注意が必要です。認知症と異なり、てんかんの場合は抗てんかん薬を使えば発作を抑えて、症状を軽減させることができるので、正しく診断して治療することが重要です。物忘れが増えたという場合は、単に物忘れというだけではなくて上で説明したようなてんかん発作によるものでないかを確認したいところです。

    てんかんの診断に必要な検査は、頭部画像検査脳波検査です。頭部画像検査では、てんかんの原因となりうる病変(脳梗塞・脳出血、脳腫瘍など)がないかを調べます。脳波では、てんかん性放電という異常な波がないかどうかを調べます。

    症状がてんかんを疑わせるもので、脳波検査で異常が出ればまずてんかんで間違いないと考えてよいでしょう。ただし、てんかんであったとしても一回の脳波検査で異常が捕まるとは限りません。必要であれば何回か脳波検査を繰り返すなどの工夫が必要となります。

    高齢者てんかんの治療法について教えてください

    大原則として、明らかな誘因のない初回の発作では抗てんかん薬による治療を開始しません。この場合は発作を繰り返す可能性が低いからです。2回目以降の発作で治療を開始することが通例です。

    しかし、高齢者の場合はこの原則が当てはまらないことが多いです。というのも、高齢者の場合は初回発作後に再発する確率が高いです。画像検査でてんかんの原因となりうる病変があったり、脳波検査でてんかん性放電が見つかったりした場合は初回発作でも治療を開始することが多いです。

    高齢者の場合は、「部分発作」と呼ばれるてんかんが多く、その場合第一選択となる抗てんかん薬はカルバマゼピン(テグレトール®)という薬になります。昔からよく使われている、てんかんに非常によく効く薬なのですが、副作用や薬物相互作用(一緒にのむ薬に悪影響をおよぼす)に注意が必要なために、使いにくい薬ではあります。副作用としては眠気ふらつきなどが非常によくみられますが、注意しなければならないのは薬疹です。スティーブンス・ジョンソン症候群と呼ばれる重篤な病態になってしまうと死亡することもありますから、皮膚に発疹ができないか注意深く観察する必要があります。その他に電解質異常や肝障害など、様々な副作用に注意しなければなりません。

    この古くから使われている薬に対して、新規抗てんかん薬と呼ばれる新たな薬がここ数年で広く使われるようになってきました。その中でも、レベチラセタム(イーケプラ®)と呼ばれる薬が非常によく使われています。これまでの抗てんかん薬と異なり、薬物相互作用や副作用をさほど気にせずに済むので使いやすい薬です。

    また、てんかんは発作が出なくなると治ったと判断して薬をのむのをやめる人がいます。しかし、薬のおかげで発作が出ない可能性もありますので、抗てんかん薬は症状が良くなっても自己判断で中止しないようにすることが大切になります。