こつずいいけいせいしょうこうぐん
骨髄異形成症候群(MDS)
血球の元になる造血幹細胞に異常が起きることで、正常な白血球、赤血球、血小板が減少する病気。しばしば白血病に移行する
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最終更新: 2024.03.04
骨髄異形成症候群(MDS)の基礎知識
POINT 骨髄異形成症候群(MDS)とは
血液中には免疫を担当する白血球、酸素を運搬する赤血球、出血を止めてくれる血小板などの血液細胞が含まれています。これらの血液細胞はいずれも、骨髄にある造血幹細胞が成長して出来上がる細胞です。骨髄異形成症候群は造血幹細胞に生じた異常のため、正常な血液細胞は減少します。また、急性骨髄性白血病へと進んでしまうことも多く見られる病気です。病初期には症状が乏しいことが多く、健康診断やその他の採血検査で偶然見つかることも多いです。病気が進行すると血液細胞が減少することによる症状として、白血球が減少して感染を起こしやすくなる(発熱)、赤血球が減少してめまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいなどの貧血症状がでる、血小板が減少して出血が止まりにくい、などが見られます。診断は採血検査、骨髄検査などで行います。治療は不足する血液細胞を補うための薬剤や輸血、骨髄移植、抗がん剤などが検討されます。骨髄異形成症候群が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。
骨髄異形成症候群(MDS)について
骨髄異形成症候群(MDS)の症状
骨髄異形成症候群(MDS)の検査・診断
- 血液検査:血球細胞の数や形態を調べる
- その他に全身の臓器機能を調べたり、体内の鉄分を測定したりする
骨髄 検査- 腰骨や胸の骨を刺して骨髄を採取する
- 骨髄を顕微鏡で確認して、骨髄異形成症候群の診断確定や細かい分類を行う
- 診断や治療反応性予測のために
染色体 検査を行う
- 画像検査
CT 検査やMRI 検査を行って、全身の臓器病変 の有無を調べておく
骨髄異形成症候群(MDS)の治療法
- 骨髄異形成症候群には多様な状態が含まれており、細かい病型の分類をおこなったうえで
予後 予測を行い、予想される予後に応じた治療が行われる - 具体的な治療内容
白血球 の不足に対する治療- 感染を起こしてしまった場合には、
抗菌薬 などを使用する - 白血球を増やす注射薬(G-CSF製剤)は
感染症 を起こした場合には使うことがあるが、異常な血液細胞も増やす危険があるので、普段は使わない
- 感染を起こしてしまった場合には、
赤血球 の不足に対する治療- 赤血球の産生を促進する注射である
エリスロポエチン 製剤を使用する 造血幹細胞 から赤血球への分化を促進する注射であるルスパテルセプト(レブロジル®など)を使用する- 貧血の程度が強い場合には輸血を行う
- 輸血を繰り返すと鉄過剰症を
発症 するため、体内の余計な鉄分を除去する鉄キレート剤(エクジェイド®など)を必要に応じて使用する
- 赤血球の産生を促進する注射である
血小板 の不足に対する治療- 出血がなければ様子をみることが多いが、極端に不足している場合や、出血を伴う処置などの前には血小板輸血が検討される
- 造血幹細胞移植
- 根治が期待できる唯一の治療だが、大掛かりな治療であり、高齢者では施行できないことも多い。進行してきた低リスク群の場合や、高リスク群の場合に行われることがある
化学療法 (抗がん剤)- アザシチジン(ビダーザ®)は特に高リスク群で生存期間を延長させる注射薬
- ビダーザ®は非常に高価な薬剤なので、高額療養費制度などを利用する
- 染色体異常の種類によってはレナリドマイド(レブラミド®)の内服を行う
- タンパク同化
ホルモン - 酢酸メテノロン(プリモボラン®)が一部の低リスク群などで使われる
- 免疫抑制療法
- 抗胸腺グロブリン(ATG)やシスロスポリン(ネオーラル®など)が一部の低リスク群などで使われる
- 高齢者に多い病気であり、急性骨髄性白血病に進むことも多いので、生命予後は必ずしも良くない
- より細かな分類にもよるが、大まかには低リスク群の平均生存期間は5年前後、高リスク群では半年から1年前後と報告されている