はいかのうしょう(はいのうよう)
肺化膿症(肺膿瘍)
肺炎が悪化して、肺の中に膿ができてしまった状態
5人の医師がチェック 94回の改訂 最終更新: 2022.07.27

Beta 肺化膿症(肺膿瘍)のQ&A

    肺膿瘍(肺化膿症)の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肺内で感染が起こり、肺組織が壊死した状態です。その結果、壊死した肺組織周囲に液状の壊死物質が貯留します。端的に言うと、肺内に膿がたまった状態になります。まれに肺以外の臓器にできた膿瘍が血流に乗って肺膿瘍となることがあるので注意が必要です。

    肺膿瘍と肺炎の違いについて教えて下さい。

    いずれも肺内で感染が起こっていますが、前者は壊死物質(膿)が貯留しているのが特徴です。膿が溜まっている分、治療を行っても治りにくいことが多いです。

    肺膿瘍が重症化したときに気を付けることは何ですか?

    慢性化して治りにくくなることがあるので注意が必要です。

    肺膿瘍が発症しやすくなる人はいますか?

    糖尿病の方や誤嚥を繰り返す方や大酒家、免疫が低下している人に起こりやすいです。また、肺気腫があったり、肺癌が存在する(隠れている場合も含む)場合は発症しやすくなります。

    肺膿瘍は、他人にうつる病気ですか?

    感染性疾患ですので他人にうつることはありますが、手洗いやうがいといった標準的な予防策で感染予防が可能です。

    肺膿瘍は、遺伝する病気ですか?

    遺伝的に免疫が弱くなる疾患が背景にあることはありますが、肺膿瘍自体が遺伝することはありません。

    肺膿瘍は、どんな症状で発症するのですか?

    肺炎と類似した症状が出現し、寒気を伴う高熱・咳・痰が見られます。痰は臭いが強いのが特徴で、時に血が混じるようになります。

    肺膿瘍が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    病気が進行して胸膜に達した場合は胸痛が出現します。また、病変が大きくなると息苦しさを覚えるようになります。

    肺膿瘍は、どのように診断するのですか?

    画像検査と細菌学的検査で診断をつけます。具体的には、胸部X線検査や胸部CT検査で肺内に膿が貯留していることを確認し、膿に存在する細菌を証明することで診断が確定します

    肺膿瘍の、その他の検査について教えて下さい。

    補助診断として、血液検査を行い、炎症反応の上昇や脱水の有無を確認します。

    肺膿瘍と診断が紛らわしい病気はありますか?

    画像ではしばしば腫瘍性病変(例:肺癌等)と判断が難しい場合があります。そのため、実際に肺の中にある細胞を取ってくる(生検)ことで診断を付けることもあります。

    肺膿瘍の治療法について教えて下さい。

    治療法は大きく3パターンが考えられます。 一つ目は、抗菌薬療法です。細菌による感染が原因ですので、これに対して菌を殺す薬物を投与します。軽症であれば抗菌薬療法のみで治療可能です。 しかし、しばしば抗菌薬用法のみでは治療に難渋し、さらなる治療が必要となることも多いです。そこで出てくるのがドレナージという二つ目の治療法です。これは肺に針を刺したり細い管を入れたりして溜まった膿を体外に出す治療です。これによって、倒すべき敵(最近)の量を減らすことができ、治療が捗ります。 そして最後の3つ目は、前述した2つの治療法で治療できなかったり、膿が大きかったりした場合にチョイスされる治療法で、壊死した肺と膿をまとめて手術で取り去る治療法です。

    肺膿瘍の治療薬の使い分けについて教えて下さい。

    肺膿瘍の原因となる細菌は複数であることが多いので、それらをまとめてカバーする抗菌薬を用います。嫌気性菌と呼ばれる菌が原因となることが多いことからこれらを中心に、具体的には背景を鑑みながらクリンダマイシンやアンピシリン/スルバクタムやピペラシリン/タゾバクタムという薬を用いることが多いです。

    肺膿瘍の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    一生抗菌薬は必要ないですが、比較的長期間投薬することが必要です。経過によってその期間は変わってきますが、一般的には6-8週間の抗菌薬治療が必要です。

    肺膿瘍では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    抗菌薬治療が効きにくいことが多い病気です。飲み薬よりも点滴で治療する方がより効果的ですし、場合によってはドレナージや手術が必要ですので、特に治療の序盤は入院が望ましいです。

    肺膿瘍は、再発を予防できる病気ですか?

    なぜ肺膿瘍が起こったかによります。特に原因なく偶発的に起こった場合には再発予防は簡単ではないかもしれませんが、原因がある場合はその原因を取り除くことが再発予防に繋がります。また、虫歯を治療することや口腔内をきれいに保つことで再発の可能性を下げることは期待できます。

    肺膿瘍は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    重症化した場合は肺が固くなって広がりにくくなります。その場合は、息苦しさといった後遺症が残りますが、よほど重症でなければ後遺症は残らないことがほとんどです。