あきゅうせいこうかせいぜんのうえん
亜急性硬化性全脳炎
はしか(麻疹)に感染してから3−10年後に脳の炎症が起こる病気。発症すると数ヶ月から数年で神経症状が進行し、死に至ることが多い
12人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2022.02.21

亜急性硬化性全脳炎の基礎知識

POINT 亜急性硬化性全脳炎とは

麻疹(はしか)に感染してからしばらく(たいてい数年くらい)たってから脳に起こる炎症のことです。麻疹に感染した数万人に1人に起こると言われています。主な症状は、知的障害・性格の変化・歩行の異常・飲み込み困難などですが、進行すると昏睡し自発的に動けなくなります。 脳脊髄液を調べて診断します。他の病気が隠れていないかを調べるために、画像検査(頭部MRI検査)や脳波検査を行うこともあります。治療はインターフェロン療法や抗ウイルス薬の投与が行われますがあまり有効ではありません。亜急性硬化性全脳炎にならないためには麻疹にかからないようにすることが大切です。そのために麻疹ワクチンを決められた時期に打つようにして下さい。亜急性硬化性全脳炎が心配な人や治療したい人は、脳神経内科・小児科・感染症内科を受診して下さい。

亜急性硬化性全脳炎について

  • 麻疹に感染した後に、脳に潜伏していた麻疹ウイルスが時間差で脳に炎症を起こす病気
    • 変異した麻疹ウイルスが原因とされるが、発症する詳細な仕組みはまだわかっていない
  • 年間に数人が発症する
    • 学童期が多い
  • 麻疹に罹患した患者の数万人に1人が発症する
  • 通常、麻疹に感染してから、数年(3-10年)の潜伏期間の後に発病する
    • 他者への感染や、遺伝することはない
    • 厚生労働省の指定する難病の1つ

亜急性硬化性全脳炎の症状

  • 初期に見られる症状発症から数か月程度)
    • 軽度の知的障害
    • 性格の変化
    • 脱力発作ミオクローヌスてんかん
    • 歩行異常
  • 上記の症状が進行するとともに、不随意運動や幻覚、妄想などが現れる
  • その後、意識障害が強くなり、昏睡状態となり死に至る
  • 経過の順に状態を4段階にまとめている
    • 1期
      • 集中力の低下
      • 学業成績低下
      • 記憶力低下
      • 性格変化
      • 言語の退行   など
    • 2期
      • ミオクローヌス発作や失立発作、大発作などのさまざまな痙攣
      • 知的障害の進行
      • 歩行障害
      • 嚥下障害   など
    • 3期
      • 知的障害のさらなる進行
      • 歩行困難
      • 摂食不能
      • 体温の不規則な上昇
      • 唾液分泌の亢進
      • 発汗異常   など
    • 4期
      • 意識レベルの低下
      • 筋緊張の著明な亢進(筋肉が硬く動かなくなる)
      • 自発運動の消失
  • 麻疹ワクチンの普及によって発病数は減っている

亜急性硬化性全脳炎の検査・診断

  • 髄液検査腰椎穿刺を行い、髄液ウイルス感染しているか調べる
    • 診断のための最も重要な検査
    • 髄液の麻疹抗体が上昇しているかどうかは重要な所見となる
  • 脳波検査
    • 特徴的な波形を見たり、てんかんと区別したりする
  • 似た症状が見られる他の疾患(上記の検査で区別する)
    • てんかん
    • 精神疾患
    • 大脳灰白質変性
    • 大脳白質変性症
    • その他の脳炎

亜急性硬化性全脳炎の治療法

  • 根本的な治療法は確立されていない
    • 麻疹のワクチンを接種して感染を予防することが最も重要となる
    • 麻疹ワクチンは、1才のうちに1回目の接種をして、年長時(小学1年生になる1年前)に2回目の接種を行う
  • 現在行われている主な薬物療法
    • イノシンプラノベクス:ウイルスの増殖を抑える作用のある薬
    • インターフェロン免疫力を高める
    • リバビリン:抗ウイルス薬
  • 症状を緩和する治療
    • リハビリテーション
    • 排尿・排便のコントロール
    • 血圧コントロール
    • 酸素投与
  • 長期的な経過
    • 一般的に治癒することはまれで、予想される経過は極めて悪い
    • 発症してから死亡するまでの期間は、平均で6年程度と報告されている

亜急性硬化性全脳炎のタグ

亜急性硬化性全脳炎に関わるからだの部位