コレラの基礎知識
POINT コレラとは
コレラ菌の作るコレラ毒素によって起こる病気です。発展途上国で発症することが多く、日本国内で発症することはほとんどありません。主な症状は白色の下痢便・嘔吐で発熱や腹痛がみられることは少ないです。脱水によって腎機能が低下したり、血圧が低下したりすることがあります。 便の中にこれらの毒素があるかどうかで診断をしますが、この検査に数日かかるため症状や流行状況で診断をつけることが多いです。症状が軽いときは特に治療する必要はないですが、症状が強い場合は抗菌薬を使用します。国内で問題になることはまずありませんが、コレラの流行地域に行く場合は生水や生の食品を口にしないようにして下さい。コレラが心配な人や治療したい人は、感染症内科や消化器内科を受診して下さい。
コレラについて
- コレラ菌が作り出すコレラ毒素によって起こる急性腸炎
- 水のような下痢を繰り返し、適切な治療を受けないと脱水になって重症化する
- コレラ菌に汚染された水を飲んだり、加熱が不十分な魚介類等を食べることが原因である
- 日本国内で感染することはほとんどない
- 多くが発展途上国で感染する
- 胃液の量が充分でない場合は重症化する傾向がある
- 高齢者
- 胃の手術後
- 胃潰瘍の薬を飲んでいる
コレラの症状
コレラの検査・診断
- 便検査:便からコレラ菌の毒素の有無を調べる
- 検査には数日間かかる
コレラの治療法
- 点滴や口から、失った水分と
電解質 の補給するのが一番の治療である症状 が軽い場合は、吸収の良いスポーツ飲料が飲用される- 飲んでも吐いてしまう場合や下痢が強い場合には、点滴によって補液する必要がある
抗菌薬 の使用- テトラサイクリン系抗菌薬
- マクロライド系抗菌薬
- ニューキノロン系抗菌薬 など
- 抗菌薬を使うことで下痢の期間の短縮や菌の排せつ期間が短くなる
- 予防方法
- 流行地で生水や生食品を口にしないこと
- コレラ菌は便の中に排出されるため、患者自身や周囲の人も手洗いを心掛けること
- コレラに感染してる場合は症状が出ていない人も便の中にコレラ菌が出ているため、感染の疑いがある場合も手洗いの予防を行う必要がある
- これらの予防接種(経口ワクチン)が存在する
- 日本国内はコレラの流行がないが、流行地域ではコレラのワクチン接種するようにWHO(世界保健機構)が推奨している
- コレラの流行地域に行く人は、ワクチンについて医療機関に相談してみるほうが望ましい
- 厚生労働省検疫所(FORTH)でコレラに関する情報を提供している
- 適切な治療(水分補給や抗菌薬など)を行えば、死亡率は1%以下である
- 治療を受けないと、重症の場合は50%以上が死亡する
コレラの経過と病院探しのポイント
コレラが心配な方
コレラは、海外を中心に見られる消化管の感染症です。衛生状態が良くない国で水道水を飲んだり生もの(かき氷やカットフルーツを含む)を食べたりして感染することが多いです。人から人へと周囲へ感染するため、海外で感染した人が帰国した後に、その人が基となって周囲へ感染が拡大していくこともあります。そのような方が周囲にいる場合、あるいはご自身が海外旅行の最中や帰国後に、大量の下痢(白っぽい水様便が特徴です)が止まらなくなった場合にはコレラの可能性があります。
コレラを疑った場合には、まずはお近くの内科を受診するようにしましょう。一般内科でも良いですし、その中でも絞り込むのであれば消化器内科や感染症内科が専門の診療科です。診断は便からコレラ菌やその毒素が検出されるかどうかで確定します。しかしすぐに結果が出る検査ではありませんので、検査を行うことなく「コレラの疑い」といった暫定的な診断で治療を行います。
海外で感染するような腸炎の多くは抗菌薬の使用で改善しますので、原因がコレラ菌だということが分からなくても内服を続けているうちに治ってしまう場合もあります。ただし、抗菌薬が効かない腸炎や抗菌薬を使用しない方が良い腸炎もあるため、症状や経過から大きな方向性(細菌性かウイルス性か、検査を行って病原体を突き止める必要性がどの程度高いかなど)を判断するのが医療機関の主な役割となります。
この判断をする上で、どこで感染したかという情報がとても大切ですので、帰国後の方はいつからいつまでどこに旅行をしていたかを医師にぜひ伝えてください。
コレラでお困りの方
コレラの場合に気をつけなければならないのが、脱水からの衰弱を予防することです。下痢が治まらないことで体の水分が失われ、また吐き気や食欲不振によって水分摂取量も減ってしまいます。すると脱水になって余計に食欲がなくなるという悪循環に陥ってしまいます。
脱水症の治療は、不足している水分に加えて塩分もしっかりと摂取することです。スポーツドリンクを飲むことができればそれが最も適切な治療になりますし、スポーツドリンクでは塩分がまだ薄いため、食塩を溶かして飲むのも良いでしょう。塩辛くて飲めないほどにする必要はありませんが、ほんのり塩の味を感じるくらいだとより適切です。どうしても口から飲めない方の場合には入院の上で点滴を行い、必要な量の水分をとるようにします。